小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

星に願いを

INDEX|23ページ/23ページ|

前のページ
 

星に願いを



ヤンキー座りの和泉が深い溜息を吐く

すっかり御機嫌斜めになった様子の上総は
貝のように口を閉じてしまった

ちらりと横目で見遣る

鉄仮面の上総を相手にするのは造作ないが
沈黙は駄目だ、苦手だ

和泉は何とかして
場の雰囲気を和ませようと思案する
しかし、その考え自体が間違いとは気付かない

膝に肘を置き、頬杖を突く

「半分、ハッピーエンドでいいかあ」

独り言つ和泉に上総が訊く

「お前は何を以てハッピーエンドだと思うんだ?」

「そりゃあ」
「彼女は残念だけど彼の願いは叶った訳だし」

そうして和泉は
傍らに立つ上総の顔を面倒臭そうに見上げて、笑った

「貴様は魂を得られない、ってかあ?」

上総の失敗を愚弄するのは和泉の特権だ
そんな機会、滅多にないが

悪魔は死神の眼を掻い潜り
願い事をする人間と契約する為、奔走する

情けない話しだ
情けなくて、上総は笑いが込み上げてくる

実際、その口元はぴくりともしないのだが

「質問」

どーでもいい口調で
どーでもいくない質問を和泉がする

「貴様は何故」
「そうまでして人間の願いを叶えるんだ?」

和泉も同類だが
和泉と上総では少し事情が変わってくる

「知るか」

上総もどーでもいい口調で吐き捨てる

「嘘だな!」

即座に和泉が立ち上がり反応する
上総の鼻っ面に人差し指を突き出し、喚く

「貴様が笑う時は不愉快な時と」
「嘘を吐いた時のみだ」

「そして今、貴様は笑った!」

鼻息荒く、自信たっぷりに言い切る和泉を
上総は鉄仮面然で眺める

なるほど
道理で俺の嘘はお前には通らない訳だ

上総自身、笑ったつもりはない
しかも二択とは優柔不断な和泉らしい

「なら、不愉快なだけだろ」

しれっと答える上総に
和泉は意外にも素直に納得する

「ぁん?そっちなのか?」
「なら、嘘吐き呼ばわりしてすまんかった」

言いながら和泉は
引っ詰めた髪の間を掻き始める

「構わん」

和泉から視線を外し
無数の流れ星が飛び交う闇夜を仰ぐ

上総は声に出さず、呟く

「どうせ嘘吐きだ」

おしまい
作品名:星に願いを 作家名:七星瓢虫