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そんな訳が。

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(─ 夜が明けてきた様だな)

 石牢の高い位置に、申し訳程度に設けられた窓

 鉄格子の向こう闇が、心持ち薄くなった。

(我が人生も、残すところあと数時間か…)

 私は医療師だ。

 旅の途中の この街で、とある病を治療した。

 この地では、救う術がない とされている病気を。

 最新の医術を学んでいた私は、その治療方法を承知していた。

 病人に、とある薬を与えれさえすれば、数日で治癒させられる事を。

 必要な生薬を入手し薬を調合、患者に処方した結果、病気は無事に完治した。

(まさか…他人の命を救った事が、自分の人生を終わらす羽目になるとは──)

 病が治った事が確認し この街を去ろうとした刹那、私は捕らわれた。

 <至高の存在>を讃える教えでは認められていない、汚れた忌術を使った罪で。

 そして私は、本日 <邪術使い>の裁判に掛けられる。

 過去に この裁判の被告になり、無罪になったものは存在しない。

 加えて、課されるのは 死刑だと決まっている。。。

作品名:そんな訳が。 作家名:紀之介