Clean getaway
「エコー、上がってくるよ」
男はうなずいた。
「お父さんが帰ってきた。医者を連れて」
一翔はその言葉に、しばらく黙っていたが、一つの結論を導き出したように、言った。
「終わり? 帰るの?」
男は、その言葉が自分を指しているということに気づき、小さく首を横に振った。依頼人が身分を騙ったのなら、契約は無効だ。
「おれがどうやってここに来たのか、お父さんに説明しないといけない」
「どうして?」
男は宙を見つめて、問いかけが宙づりのまま、ドアが開くのを待った。一翔の言葉に答えるには、少し時間をかけて、今から部屋に入ってくる父親と最適な答えを見つけてからの方がいい。
通話履歴、依頼内容の受け渡しに使った喫茶店、ライフルが置かれた地下駐車場のバン。おれは全て知っている。
この悪手を考えついた人間に辿り着いて、その喉仏を潰すために必要な全てを。
作品名:Clean getaway 作家名:オオサカタロウ