リピート
――凛――
令和元年十月――
「昨日深夜二十三時頃、足立区栗原のマンションで男性二十八歳が飛び降り自殺をし、救急搬送されましたが、二時間後、病院で死亡が確認されました。この男性は精神疾患をもち、その一週間前、類似した事件が、あり警察官は再度一週間前の事件も再調査しているようです。一週間前、やはり精神疾患を持った三十二歳男性が飛び降り自殺をし、この二人の自宅を調べたところ、アイドルグループメロンクリームのCDを、ともに六百枚以上購入しており、メロンクリームのリーンさんのサインが飾ってあるなど、二つの事件が非常に類似しているということです」
「どうでしょう、川越さん。ええ、リーンさんはハーフタレントであり、カリスマ的アイドルとして、CM、映画、ドラマにも引っ張りだこですが、非常に謎の多い人でもありますし……」私の前で社長がテレビを消した。
記者会見に臨む前、社長が私に「本当に何もないのかね?」そう尋ね、
私は社長の目をじっと見て、「はい。何も」「うん分かった。じゃあ、記者会見に一人で臨むんだ」私は報道陣の前に立った。
「リーンさん。二人の男性の飛び降り自殺なんですがね。何かリーンさんとの関係があったと、世間の目ではとってしまわれるんですよ」
「二人は……」フラッシュが八月の花火のように絶え間なく続く。
「二人を私は知っています。熱烈なファンだったことも」
「自殺した二人の男性を知っているということですね」
「はい。ただ二人にはアイドルとファンという関係であってそれ以上の関係はないことを握手会で告げると、ひどくショックを受けたようで、精神疾患を持っているようだし、非常にナイーヴのようで……」
「リーンさん。ただアイドルとファンの関係だと言っただけで、二人は飛び降り自殺をしたということですか?以前からリーンさんとファンとのいき過ぎた関係が騒がれていたのですが、我々、どうもそのいき過ぎた関係とこの事件が何らかの因果関係があると思わざるをえないんですよ」
「私……ファンに喜んでもらおうと、必死に、ファンに奉仕し……もしそのことで、私のせいで彼らを追い込んでいたのだとしたら、私……」
私は手で涙をぬぐった。
「リーンさん。ファンへのサービスはいいんですよ。アイドルグループはみんなやっているから。ただ、リーンさんの、そのいき過ぎたサービスとこの二人の自殺の因果関係をですね……」
「すいません」私はその場を離れた。
「ちょっと、リーンさん逃げるんですか?」
「リーンさん」「リーンさん」