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――凜――  
平成二十四年九月――
 
 命

命とは人がただ単に生産するもの

人が人を生み、ただ、人ができること

それ以外なにも意味を持たない

皮肉にも人は生まれてくるもの

好むと好まざるとにかかわらず

「星合、ちょっと、後で職員室に来てくれないか?」
「はい」何の抑揚もなく、平坦に担任の睦に返事をした。睦を見ていると、何もかも嘘の世界で育ったと思うのは、私だけか。
――偽善、何か睦を思うと、偽善を原動力とした教師の仮面をかぶっているものと思ってしまう。
 職員室までのただだだっ広い廊下を何の意志も持たない冷めた羊のように、歩いていたのだろう。
「おい、星合」そう睦が私を呼んでいる。
 職員室に入ると、小さな個室のようなところに案内され、お互い肘掛椅子に座り、睦と対峙する。
「星合凛!」
 そう睦は、私をフルネームで呼ぶ。
「お前の詩を読んだよ」睦は何か芝居じみた口調で言い、また、オーバーに分かりやすく肘掛椅子に手をかけるしぐさをした。何かうっとりでもしているかのように、威勢よく凜を凝視する。
「お前の命の詩、中学三年生の詩がこれだもんな」睦がため息をつく。
 私はただ睦の方を向くでもなく、うつむくでもなく中途半端に視線が遊んでいた。
「ニヒルがかっこいいとでも思っているのか」そう睦が言い放った。
 私は睦を睨みつけた。
「別に」
「子役の仕事をやってるんだってな」「ええ」
 子役といってもテレビとつながっている劇団に所属して劇をやっているだけで、他はたいてい仕事がない。仕事といってもテレビの仕事は、大半はエキストラ、戦隊ものの怪獣から追いかけられ、逃げるシーンや、日曜日の街中での親子連れの子供の役をするといったような仕事だ。何度かセリフのある仕事をした経験もなくはないが、そういう仕事は続かない。
 単発でセリフのある私のやったエキストラキャストは、エキストラと違って、オーディションがある。その類はオーディション日、本番撮影日と、日程が五日も六日も予備日も含めて取られるのでなかなかエントリーができない。
 セリフを覚えていても、本番になって変わることがある。
“お母さん、私を殺さないで”
 そんな言葉が私の頭の中を反芻する。
「おい、星合、聞いているのか?」睦に言われるまで、私は上の空になっていた。少しも悪いなんて思わない。
「すいません。先生、私急ぐんで」
 私は立ち上がり、有無を言わせぬ態度で睦から離れていった。
「おい!星合凛!」睦の言葉を無視するかのように無造作にドアを開け、私は職員室を後にした。
 
 睦が見えなくなったところで私の誕生日である平成十年七月十日の出来事を携帯で見る。北区赤羽事件での……開いてみる。
 この記事は閲覧できないようになっております。
 そう出てくる。必ずだ。
 なぜか私の誕生日の記事だけが見れないようになっている。私の携帯だけ?いや違う。以前学校のインターネットでも調べた。そもそも記事が載ってないときがある。たまに北区での……と出て開いてみると、
 この記事は閲覧できないようになっています。
 必ずそう出る。何故だ。ネットをここまで管理するにはよほど大きな力を借りなければ、記事の内容を隠すことはできない。まさか国家がらみの……いずれにしても大きな力だ。
作品名:リピート 作家名:松橋健一