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本当にあったゾッとする話9 -あなたは何故そこに-

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10年ほど前の話になる。
当時、私は都内の会社で働いていた。会社には都内に複数のオフィスがあり、私は業務の都合上、日によって異なるオフィスを行き来していた。
ある日、都内と言っても下町と言えるエリアにあるオフィスで仕事をし、定時に退社した。そのオフィスから最寄り駅まで、徒歩10分程度の距離だった。私が駅に向かって歩き、駅まで残り100メートルほどの距離になった時のことだった。私が歩いている道の脇道から若い女性が出て来て、歩いている私の真横にピタリと付いた。若い女性が自分から見ず知らずの中年男に張り付くわけは無いから、たまたま、タイミングがぴったりと合ってしまったのだと思う。
真横に張り付かれた私は戸惑った。相手が若い女性だったし、それこそ肩と肩が接しそうなほど、近かったから。しかし、私の歩く速度は速い。およそ1キロを10分、つまり時速6キロメートルで歩く。人が歩く平均的な速度は時速5キロメートル程度らしいので、普通の人で私の歩く速度に付いて来られる人は少ない。だから、私はすぐにその女性を引き離せると思った。
しかし、その女性はよほど急いていたのか、速足で私にピタリと付いて来る。
私は改めて戸惑った。今から歩くスピードを変えるのもわざとらしいし、かと言って見ず知らずの若い女性と肩を並べて歩くのも恥ずかしい。相手の女性もひょっとしたら、同じようなことを考えているのかも知れない。
私は迷いながら悩みながら、結局その見ず知らずの若い女性と、肩が張り付くほど横に並んだまま、駅の改札まで歩いてしまった。
他人から見たら、仲の良い親子に見えたことだろう。

もう一つ、やはり昔の話だ。
その日、私は用事があって普段仕事をしているオフィスとは別のオフィスに来ていた。
昼休みになり、有楽町にあったそのオフィスで仲の良かった後輩と二人で、食事に行くことになった。
後輩の行きつけの店に行く途中、ちょうど山手線のガード下に差し掛かったところで、後輩の携帯電話が鳴った。仕事上の急ぎの電話だったようで、後輩は私に少し待っていてくださいと言って、電話に出た。私は後輩の側で、後輩の電話が終わるのを待っていた。
すると突然、いきなり誰かが後ろから私の両肩に、ポン! と両手を置いた。
私は驚いて振り返り、肩の上にある手の持ち主を見た。それは、まったく知らないOL風の若い女性だった。
その女性はニコニコと笑いながら私と目が合うと、相変わらず笑いながら両手を私の肩から外し、そのまま普通に歩き去った。
このような動作をした相手が人違いだった場合、普通は驚いて謝罪するのもだと思うが、その女性は驚いた気配がまったく無く、まるで仲の良い知り合いを街中で見つけたときのように、両肩をポンと叩いて歩き去ったのだ。
あれは、人違いだったのだろうか、それとも私によく似た人が普段からあの界隈にいたのだろうか。