魔導士ルーファス(2)
バトンは走者だけの思いを乗せてるんじゃない。ここにいる全員の想いを乗せているのだ!
もう少し、もう少しでバトンの先がビビの手に届く。
って、バトンの先って切っ先だし!
「受け取れるわけないじゃん!」
大声でビビがツッコミ手をさっと引いた瞬間、首なしの心が折れた。
ドゥラハンの剣が手から滑り落ちる。
スタジアムに響き渡る悲鳴の怒号。
首なしは気づいた。まだだ、まだ終わっちゃいない。バント拾い上げ、もう一度――。
と、腰をかがめて剣を拾おうとして、壮大に素っ転んだ!
ビビの背中にダイビーング!
まるでスローモーション。
走馬燈のように蘇る記憶。
――立て、立つんだジョー!
「「ジョーじゃないし!」」
ルーファス&ビビのダブルツッコミが炸裂した瞬間、ドカンと一発大転倒。ルーファスとビビを巻き込んで、大車輪のように地面を転がり回った。
グルグル転がる生首。
「ぎゃぁぁぁぁ〜っ!(目が回るぅぅううっ)」
地面に放り出されたように倒れ込んだビビが、眉尻を下げてゆっくり立ち上がった。
「いった〜い。ひざすりむいたぁー」
うるうる瞳のビビちゃん。
胴体と生首は?
「あ、間違えた」
だれかがボソッとつぶやいた。
声のしたほうに目を向けると、カーシャの傍らでルーファスが立ち上がろうとしていた。
ルーファスのシルエット。
そこにはなんと首がある!
カーシャが手に持っているのはアノ接着剤。
ふあふあしているローゼンクロイツが、何気なぁ〜くドゥラハンの剣を鞘に収めていた。
ついに一件落着か!?
ルーファスの首も元通りに、元通り……に?
ビビが苦笑いをした。
「ルーちゃん……」
そして、あからさまにイヤそうな顔をした。
「キッモ〜イ!」
新たな変態魔獣誕生の瞬間だった。
首が逆さま!
顔が背中から見える。
「キモイとか言わないでよ。どうしてくれるんだよカーシャ!」
涙目でカーシャに詰めよつもりが、逆方向に爆走。本人的にはカーシャに向かっているつもり。
どてっ。
身体のバランスが取れずにコケた。
立ち上がろうとジタバツするルーファスの顔を、真上からローゼンクロイツが覗き込んだ。
「切り離すものが必要なら貸すよ?」
差し出されたのは鞘に収まっているドゥラハンの剣。
恐怖に歪んだ表情で眼を剥いたルーファス。
無表情な目をして、ローゼンクロイツは口もとに不気味な笑みを浮かべた。
果たしてルーファスのその運命はッ!?
第19話_首ちょんぱにっく おしまい
作品名:魔導士ルーファス(2) 作家名:秋月あきら(秋月瑛)