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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

INDEX|97ページ/110ページ|

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 さっそく再び湿原に向かった3人。
 獰猛なカナヅチカバに警戒を払いながら、クラウスとルーファスに守られながらビビが大地に立つ。
 大きく息を吸ったビビが歌いはじめた。
 優しい歌声が静かな夜に響く。
 草陰に隠れていた動物たちが少しずつビビの元へ近付いてきた。その中にはカナヅチカバもいて、ルーファスはビビり、クラウスは身構えたが、襲ってくるようすはまったくない。動物たちは穏やかな雰囲気で、ビビの歌に聴き惚れているようだった。
 しかし、モレチロンは姿を現さない。
 湿原は広い。もしかしたら、ここにはいないのかもしれない。
 あきらめてクラウスがビビに声を掛けようとしたとき、ルーファスが『あっ』と声をあげた。
「水の中から角が!」
 まず見えたのは2本の小さな角、さらに下から巨大な2本の角が水面から這い出てきた。
 4本の角を持つ黒い牛が水面から上がってきた。
 こいつが妖獣モレチロンに違いない!
 ビビは眼を丸くしながらも歌い続けた。
 手の届くところまでモレチロンがやって来た。そして、そこで腰を下ろして眼を閉じて、まるで眠ったように動かなくなってしまった。
 クラウスが静かに長剣を抜く。
 鞘から抜かれた切っ先が月光を反射した。
 刹那、鋭い切れ味でモレチロンの短い角が切り落とされた。
「あっ!」
 ビビは驚いて歌うのをやめてしまった。
 すぐにクラウスは落ちた角を拾い上げてビビに顔を向けた。
「どうしたの?」
「だって角を切ったらかわいそうだと思って」
「ビビちゃんヴァッファートの話を聞いてなかった? 短いほうの角は1年に1度生え替わるそうだよ。それに角には神経が走ってないから痛みは感じないはずさ」
「よかった、そうなんだ」
 と、安堵したのもつかの間、ルーファスが青い顔をしている。
「か、かば……」
 巨大な口を開けるカナヅチカバ。
 クラウスが叫ぶ。
「撤退!」
 3人は一目散にヴァッファートの元まで逃げた。