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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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 業火を呑み込まんばかりの猛吹雪。背筋がゾクゾクするほど気温も下がっている。
「ルーちゃんがライラを使えるなんて!?(学生の分際でライラを……!?)」
 猛吹雪が業火を呑み込んでいく。火は風前の灯火になった。
「治まったか……?」
「ルーちゃんカッコイイ♪」
 が、この業火はただの業火に非ず、悪魔の炎だった。
 一時は勢いを失った火が再び業火となり吹雪を丸呑みにした。ルーファス愕然、ビビ唖然。
 切る札とも言えるライラを使ってもなお、火を消すことはできなった。ルーファスは決断を迫られていた。
「(もし、私がここで死ねば、私の影に依存関係にあるビビもたたじゃ済まないな」
 そう、恐らくルーファスが消滅すれば、ビビも解放されるのではなくともに消滅してしまうだろう。
 悪魔の契約は絶対。その契約のチカラが大きければ大きいほど、リスクは大きくなり、悪魔自身の力ではどうにもならない。まさにルーファスとビビの間に成されてしまった契約はそれだった。ビビは完全にルーファスの一部として存在している。
 不安そうにビビがルーファスを見つめる。
「ルーちゃん、どうしよう?(このまま消えちゃうのかなアタシたち)」
「(ここでもし私がビビに魂を全て捧げたら……)」
 もし、ここでルーファスが魂をビビに全て捧げたら、火災は治まり全てを終えたビビはルーファスの影から解放されるだろう。
 真剣な眼差しでルーファスがビビを見つめた。
「私の魂を全て狩るんだ。そしてこの火を止めれば……」
「ダ、ダメだよ。そんなことしたらルーちゃんが死んじゃうし、火を消すのに魂全部貰うなんて、契約を結んだ悪魔は必要以上の代償を求めちゃいけんんだよ、だから……だから絶対ダメだよ!!」
 自分の魂を全て狩るように言われたが、ビビは困惑した。それが使命のはずなのに……。
「このままだと二人とも死んじゃうから、だから私の魂を……(……短い人生だったな、でも仕方ないよね)」
 確かにルーファスの魂を狩ることは彼女の使命のようなものだ。しかし、彼女はルーファスと長く一緒にい過ぎた。
「できないって、ルーちゃんのこと……ダメだよ絶対」
「お願いだから……」
 大鎌をルーファスの頭上へと振り上げた。しかし、鎌はそこから微動だにしない。
 ガタガタと大鎌が震えている。ビビの目は少し潤んでいた。
 ルーファスはビビを見てやさしく微笑んだ――。
「(これがアタシの使命だから……)」
 そして、大鎌はルーファスに振り下ろされた。
 ルーファスの魂は肉体と切り離せれ、白い煙りのような物となり、大気中を漂い目を閉じたビビの柔らかそうな口の中へと吸い込まれようとしている。
 その時、ゴォォォン!! という轟音とともに爆発が起きた。
 ビビが目を丸くして辺を見回すと、そこにはカーシャと初老の男性――パラケルススが立っていて、火は瞬く間に消え部屋には硝煙だけが残されていた。
 パラケルススが叫んだ。
「ルーファスを早く!!(身体に戻さんと大変なことになる)」
 ルーファスの魂は未だ大気を煙りのように漂っていた。
 魂は肉体を離れて長い時間存在することができない。このままではすぐに消滅してしまう。一刻の猶予も許さない事態だ。
 床を滑るようにしてカーシャが一早く動いて、ルーファスの魂を封じた。
 ルーファスは助かったのか? しかし、カーシャの顔は蒼ざめていた。
「……しまった(カーシャ不覚……ふふ、笑えない)」
 呆れ顔でパラケルススはカーシャに向かって言った。
「自業自得じゃな(わしのホムンクルスを盗むからじゃ)」
「…………(ふふ、笑えない)」
 無言のカーシャにパラケルススは話を続ける。
「罰として1週間そのままでいるように、2人ともわかったな?(ひさしぶりに高等魔法を使ったんで疲れたわい)」
 ?2人?にそう命じたパラケルススは頭を抱えながら部屋を足早に出て行ってしまった。
「ヤダよそんなの(カーシャと1週間このままなんて)」
 どこからかルーファスの声が発せられた。――カーシャは間違ってルーファスの魂を自分の影に封じてしまったのだ。
「妾だってルーファスとこのままなんて御免だ(トイレやお風呂もいっしょなのかもしかして!?)」
「カーシャがミスったんでしょ?」
「これでは、ビビと同じでは無いか……ふふ」
「まあ、私は死なずに済んでよかったけどね(ふぅ〜命拾いした)」
 ……この状況を見ながらビビはきょとんとしてしまっている。そんな彼女の元へ、パラケルススが再び姿を現した。
「忘れとったわい(この子をどうにかしてやらんと)」
 笑いながら現れたパラケルススはルーファスの抜け殻となった身体の横に立ち、ルーファスの影からいとも簡単にビビを解放してして、ルーファスの肉体を魔法で宙に浮かして運び、カーシャに微笑みかけるとすぐに行ってしまった。
「あれ、もしかしてアタシ自由になったの? やった〜v」
 ジャンプしながらはしゃぎ回るビビを見ながら、カーシャは肩をがくんと落として、ひどい頭痛に襲われた。

 これから1週間の間、カーシャは頭痛に悩まされることとなり。ルーファスはビビの時とは違って影から出ることが全くできなかったために、暇を潰すためにカーシャに一日中話し掛け、カーシャの頭痛は酷くした。
 パラケルススの実験室にビビはいた。
「ねぇパラケルスス先生」
「ん、なんじゃな?」
「ルーちゃんが元に戻るまで、パラケルスス先生の助手としてここに置いてくれない?」
「ふぉほほほっ。まあ、いいじゃろう。ルーファスの肉体をしっかりと管理しておくれ」
「やったーっ! ありがとう♪」
 ビビは、ルーファスの魂から解放されたあと、パルケルススの助手として学院に少しの間居座り、ホムンクルスと一緒に保管されているルーファスの肉体の大切に管理をしていたという。
 それから、もちろんルーファスの悪魔召還のテストは赤点が付いたらしい。

 桃髪の仔悪魔 おしまい