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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

INDEX|34ページ/110ページ|

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 てゆーか、熱帯魚を散歩させるって犬じゃないんだから。
 じゃなくって!
「熱帯魚に肖像権とかないでしょう(そんな裁判聞いたことないよ)」
 ルーファスのツッコミ炸裂。
「まずはABCたちの住民票を作るところからはじめようと思うんだ(ふあふあ)」
「たぶん交付されないと思うけど」
「外国人や悪魔や亜人、その他の種族にも権利はあるよ?(ふにふに)」
「それは彼らが知性と文明を持った生物だからで、熱帯魚になんかに国で与えられる権利なんかないよ」
「……あっ!(ふにゃ)」
 天地がひっくり返るような、驚き顔をローゼンクロイツは作った。
 そして、ボソッとひと言。
「ABCに餌あげるの忘れてた(ふあふあ)」
 そんなに大事な熱帯魚なのに、なぜ餌を忘れる!!
 それはローゼンクロイツの物忘れが激しいから。
 そんなローゼンクロイツにアインは――。
「萌え〜っ!」
 再び声をあげて周りの視線を集めるアイン。顔を真っ赤にして物陰に潜んだ。
 そんなアインを見ていたルーファスが、再びローゼンクロイツにヒソヒソ話をする。
「いい加減ビシッと言ったほうがいいよ。そうでないといつまでも付きまとわれるよ(なんか芸能人みたいでカッコイイけど)」
「そうだね(ふにふに)。ビシッと言って来よう(ふあふあ)」
 ツカツカと正確な歩調でローゼンクロイツは進み、アインは緊張で逃げることもできなかった。
 そして、ローゼンクロイツはビシッと指を差して言う。
「ビシッと!(ふにゃっ!)」
 文字通りビシッと言って、踵で180度回転してローゼンクロイツは去っていく。
 ビシッと指さされたアインは、キューピッドの矢に射抜かれたように、胸キュンだ。
 余計にアインはときめいてしまった。逆効果だ。
 トキメキすぎてアインはその場で気絶した。
 気絶したアインはニタニタ笑いを浮かべて幸せそうだった。
 これで死ねるなら本望だろう。

 ビシッと効果でストーカーを振り切ったローゼンクロイツ。ルーファスと魔導学院の正門を出る寸前だった。
 突然、ローゼンクロイツが足止めた。
「……そうだ(ふにゃ)」
「なに?」
「朝食食べるの忘れた(ふあふあ)」
「はぁ?」
「……そうだ(ふにゃ)」
「なに?(2回連続?)」
「昨日寝るの忘れれた(ふあふあ)」
「はぁ!?(寝るの忘れるって異常だよ)」
「……そうだ(ふにゃ)」
「また?(3回連続なんて珍しい)」
「ABCに餌あげるの忘れてた(ふあふあ)」
「それさっき言ったし(なんかいつもより重症だぞ)」
 心配そうにルーファスはローゼンクロイツを覗き込んだ。
 日ごろから物忘れの激しいローゼンクロイツだが、いつも一緒のルーファスはなにか不安を感じた。
 そういえば、最近?発作?もよく起こしているようだった。
 ローゼンクロイツの発作というのは――なんて言ってる先から!
「はっくしょん!(ふにゃ)」
 大きなクシャミをしたローゼンクロイツ。ルーファスが止める間もなかった。
 これはあまりよろしくない事態だ。
 周りには下校途中に生徒もたくさんいらっしゃる。
 メタモルフォーゼ!!
 つまりローゼンクロイツ変身!
 ローゼンクロイツの頭に、ひょこッとネコミミが生えた。
 ローゼンクロイツのお尻に、ぴょんとしっぽが生えた。
 ローゼンクロイツの口が、ニヤリと笑う。
「ふにふにぃ〜」
 羊雲のような声を発したローゼンクロイツ。今の彼はまさしく猫人間→略して猫人。
 1月1日生まれのローゼンクロイツの特殊体質。クシャミをすると猫人になる。
 しかも、人語もまったく通じずトランス状態のローゼンクロイツは、理不尽な破壊活動を行なうのだった。
 デンパを発する人畜有害生物だ。
 そんなローゼンクロイツがルーファスの手に負えるはずもなく、ここは逃げるしかない。
 ルーファス逃亡!
 しようと思ったのに遅かった。
 電気を帯びた伸縮自在のしっぽがルーファスを襲う。『しっぽふにふに』という打撃魔法(?)だ。
 ローゼンクロイツのお尻から伸びたしっぽが、自由気ままに縦横無尽に暴れまわる。
 辺りを歩いていた生徒たちも一目散に逃げる。
 そんな中、逃げ遅れたルーファスにしっぽ直撃!
 ビリビリと肩に電気が走ったルーファスは腰痛回復。
 『しっぽふにふに』の電力は低圧から高圧。気分と運次第で違う。今のは運がよかったほうだ。
 次のしっぽがルーファスの足元に迫る!
 ルーファスジャンプ!
 しっぽは1周して再びルーファスの足元に迫る!
 ルーファスジャンプ!
 またしっぽは1周して再びルーファスの足元に迫る!
 ルーファスジャンプ!
 またまたしっぽは1周して再びルーファスの足元に迫る!
 ルーファスジャンプ!
 ローゼンクロイツとルーファスの奇跡のコラボレーション技、しっぽ大縄跳びが生まれた。
 自然と生徒から拍手がもらえる必殺技だ。
 なんてことをしているうちにローゼンクロイツが飽きた。
 突然、四つ足をついてローゼンクロイツが走り出した。
 通常のダッシュよりも早く、運動苦手なルーファスには到底追いつけない。
 しかし、ルーファスは行き先の検討がついていた。
 学院内で発作が起きたとき、いつもローゼンクロイツが行く場所があるのだ。
 寄り道しながら破壊活動を行なうローゼンクロイツをほっといて、ルーファスは一直線でその場所に向かった。
 寄り道のせいか、ルーファスとローゼンクロイツがその場にたどり着いたのは、ほぼ一緒。
 学院の時を司る何十メートルもある時計搭。入り口からローゼンクロイツは一気に駆け上る。すぐにルーファスもあとを追った。
 階段をゼーハーゼーハー置いてけぼりのルーファス。
 その耳に甲高い金の音が鳴り響いた。
 ゴーンと一発、ローゼンクロイツが巨大な鐘にヘッドアタック!
 そのままローゼンクロイツは気を失った。
 駆けつけたルーファスはローゼンクロイツを抱きかかえる。
「大丈夫ローゼンクロイツ?」
「……ふにゃ?(ふにゃふにゃ)」
 目をパッチリ開けたローゼンクロイツからは、耳もしっぽも消えていた。元の人間に戻ったのだ。
 なぜか近距離で見詰め合う2人。
 ここでローゼンクロイツがひと言。
「ボクの唇を奪う気?(ふあふあ)」
「違うし!」
「……知ってる(ふっ)」
 無表情な顔についた口が一瞬だけ歪み、すぐに無表情に戻る。
 いつものように、またからかわれた。