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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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「そうだ、ルーちゃん知ってる?」
 作戦、無理やり話を切り出して、さっきのことは水に流してみる。気持ちも心機一転、笑顔のビビ。笑顔をビビの得意技だった。
「なに?」
「この病院にオバケが出るらしいよ」
「蜘蛛男?」
「はぁ?(それってオバケじゃなくて怪人じゃん)」
 蜘蛛男(ルーファス)ではないらしい。となると、ローゼンクロイツの話してくれた話ではないっぽい。
 話に乗ってきたルーファスを見るビビのキラキラ目線。ちょっと自慢げ。
「教えて欲しい?」
「いや、別に……(怖いからそんなに聞きたくないなぁ)」
「もしかしてルーちゃん怖いの?」
「ギクッ! そ、そんなことないよ!」
「ルーちゃん焦りすぎ(ホントわかりやすいんだから)」
「焦ってなんかないよ!」
 無意味に手で防御体勢をするルーファス。完全に取り乱していた。
 ルーファスを困らせてやろうとビビは話を続ける。
「実はね……」
「実は……?(あんまり怖くありませんように)」
 ゴクンとルーファスは咽喉を鳴らした。と同時にビビが大声を出す。
「ピョンシーが出たんだって!」
「はぁ?(なにそれ)」
「ルーちゃんピョンシー知らないの?(ダッサー、ちょーポピュラーな妖怪じゃん)」
 ビビの主観なので本当にポピュラーがどうかはわからない。
 なんだかルーファスの恐怖は吹っ飛んだ。聞いたことも見たこともなく、ネーミングもそんなに怖そうじゃない。
「ピョンシーなんて聞いたことないよ。詳しく教えてよ(なんか可愛いウサギの名前みたい)」
「元々人間の屍体なんだけど、そこに闇の力が宿って怪物になるんだよ。ピョンピョン飛んで移動するからピョンシーって名前になったんだって」
「ジャンプしながら移動するアンデッドってこと?」
「うんうん、原産地は東方の国だったかなぁ」
 あまり怖そうな感じがしない。特にピョンピョン跳ねるところが、逆にユーモラスに感じられる。
 けれど、実際に追いかけられたら怖いかもしれない。
 ルーファスの脳裏にトイレのベンジョンソンさんが思い浮かぶ。見た目は犬顔のアフロなのに、追っかけられたときはそれが怖かった。
「(でもあれは夢だ。絶対に夢だ)」
 ルーファスは昨晩の出来事を夢と思っているのではなく、夢だと思い込みたいようだった。
「そんなわけだからルーちゃん、今夜調べてみようよ!」
 唐突なビビのセリフにルーファス驚く。
「はぁ!?」
「ルーちゃんの代わりにアタシが夜までに準備しとくね♪」
「はぁ?」
「じゃあねルーちゃん、またねー!(夜が楽しみ)」
 元気よく笑顔でビビは部屋を後にしていった。一度火がついたビビは止まらないらしい。
「あの、だから、足治ってないんだけど……」
 ルーファスは呟いた。だが、ビビはとっくに病室を後にしていた。
 独り残された病室に思いため息が漏れた。
 天井をボーっと眺めていると、しばらくしてノックが聴こえた。
「どうぞ」
 と、ルーファスが合図をすると、ドアを数センチだけ開けて何者かの瞳が部屋の中を覗いた。
「ふふふっ、見舞いに来てやったぞ、へっぽこ」
 ドアを大きく開いて入ってきたのはカーシャだった。
 ここでルーファスはローゼンクロイツにもした質問をする。
「学校は?(カーシャまでサボリってころはないよね)」
 カーシャは魔導学院の教員である。
「昼休みだ(ルーファスのところに来れば、なにか面白そうなことがありそうだと思ったが、なにもなさそうだな)」
「もう昼休みの時間なんだぁ。じゃなくて、昼休みって結構すぐ終わると思うんだけど」
「いざとなれば自習にでもすればよかろう(ぶっちゃけ、ルーファスのいない学院はつまらん)」
「(そろそろこの人クビになってもいいと思うんだけどなぁ)ちゃんと授業しないとクビになるよ」
「そのときはそのときだろう。ところでルーファス、茶!」
 病人にお茶を出せ攻撃!
 人使いが荒いという限度を越えて、カーシャは怪我人を怪我人と思ってないほど、自己中心的な女だった。
「お茶なら、そのポットで自分でいれてよ」
「客人に茶をいれさせるなど、どういう神経をしてるのだ(ホントつかえんやつだ)」
 それはこっちのセリフだ。
 ブツブツ愚痴を言いながらお茶をいれるカーシャ。その姿を見ながら、ルーファスはため息を付かずにはいられなかった。
「……はぁ(カーシャってホント人をいたわるってこと知らないよね)。ところでカーシャ何しに来たの?」
「見舞いに決まってるだろう、アホかお前は?」
「(アホじゃないし)だってさ、わざわざ昼休み来るなんて、なんかあるのなぁって思うじゃん」
「特にない」
 キッパリ、アッサリ、サッパリ答え、言葉を続ける。
「しいていうなら、面白いことを探しにきた」
「はぁ?」
「なにかないか?」
 そんなこと突然聞かれても困る。
「なにかって言われても……病院にオバケが出たらしいって話くらいしかないかなぁ」
「どうしてそんな面白いことを早く言わんのだ」
「話の流れってあるでしょ」
「よし決めたぞ。今夜この病院を捜索するぞ。もちろんお前も一緒だ(今年初の肝試しだ……ふふ、楽しみ)」
「は、はい?」
「では、また夜に来る」
 勝手に話を進めてカーシャは部屋を出て行ってしまった。
 残されたルーファスは呟く。
「だから足が治ってないから……」
 どいつもこいつもルーファスが怪我人だということが、頭からスッポリ抜けているらしい。
 頑張れルーファス!
 負けるなルーファス!