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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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「……やはり貴女が起こした騒ぎだったのですね」
「出すのか出さないのか?」
「(仕方がない)出しましょう。今すぐお支払いはできませんが、直接こちらが被害額を立て替えると言うことでどうですか?」
「うむ、よかろう。ではこれが完成した角笛だ」
 おもむろにカーシャは胸の谷間から角笛を取り出した。
 それを見た二人は目を丸くした。
「「え?」」
 なにが起きたのか理解できない。
 採ってきた角はたしかにクラウスが持っている。
 なのにカーシャは完成品を持っているのだ。
「こんなこともあろうかと、出来た物をすでに用意しておいたのだ」
 3分クッキングかっ!
 てゆか、ヴァッファートの元へ行き、さらに苦労して角を採ったのが、すべて取り越し苦労に終わった瞬間だった。
 唖然とするクラウスからカーシャが角を奪い取った。
「これは妾が預かって置こう。そして、これを受け取るのだ」
 そして、角笛を渡した。
 ここでカーシャがボソッと。
「あと5分もないぞ」
 それは日が開けるまでの時間だった。
 焦るクラウス。
 そこへエルザが駆けつけた。
 エルザの顔は見るからに怒っていた。
「クラウス様、どこをほっつき歩いていたのですか!! しかも大事な〈誓いの角笛〉まで持ち出して!」
 壊れたことはバレていないらしい。
「その……すまんエルザ」
「神器をお持ちしました、すぐに装備して鐘楼までお急ぎください!」
 初代国王ラウルがヴァッファートから贈られた三種の神器。
 1つはすでに装着している〈ウラグライトの指環〉。
 エルザがクラウスに手渡したのは〈竪琴の杖〉。
 そして、空を飛べる〈白輝のマント〉。
「これがあれば間に合う!」
 歓喜にクラウスは打ち震えた。
 〈誓いの角笛〉と三種の神器を装備したクラウスが空に舞い上がった。
「行ってくる!」
 瞬く間にクラウスの姿が消えた。
 残された3人は空を見守る。
 3分を切った。
 もうクラウスは鐘楼に辿り着いただろうか?
 1分を切った。
 本当に間に合ってくれただろうか?
 ルーファスは懐中時計の秒針を見つめ、零時ちょうどに空を見上げた。
 もし角笛が鳴らされても、ここまでは聞こえてこない。
 まだわからない。
 鐘の音が聖リューイ大聖堂の方角から鳴り響いて来た。
 やがて鐘の音は街のあちこちから響きはじめ、夜空には壮大な花火が華を開かせた。
 そして、咆吼と共に空を舞う国の守護者ヴァッファート。
「やったー!」
 ルーファスは叫びながら両手を高く挙げた。
 無事に建国記念祭が幕を開けたのだ。

 一方のそのころビビは――。
「わっちの酒が飲めないってのか〜い!」
「ちょっと、もうキスとかしないでぇ〜!!」
 涙目を浮かべながらリファリスに絡まれ襲われていたのだった。

 第9話_角笛を吹き鳴らせ おしまい