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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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響け、あの遠いところへ

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 1-2のまま試合は9回ウラまでもつれこみ、泥まみれのユニフォームを着た桐谷先輩が登場した。2アウト、ランナーは2塁3塁。何とかして1人ホームに戻ってきてほしい。先輩がバッターボックスでバットを構えた。応援団は最後の力を振り絞って声を張り上げる。

 スタンド総勢120名の大声援が桐谷先輩に降りそそぐ。

「カットバセー! キーリッタニ! キーリッタニ! キーッリッタ……」

 次の瞬間、キィンと音が鳴り、ボールが高く打ち上げられた。敵味方、両陣営から声が上がると同時に桐谷先輩が走り出す。千秋は祈るような気持ちで先輩を見つめる。外野手たちが必死になってフェンス近くまで走っていく。
 
 ボールは大きな弧を描き――そのままライトスタンドの隅に吸い込まれていった。

 空気が割れてしまいそうなほどの大喝采が響き渡った。桐谷先輩は一塁ベースを踏んだあと、右手のこぶしを天に突き上げた。赤いメガホンが嵐のような音を響かせ、千秋は思わず茅野くんの方を見た。

「ホームラン……」
「2ランホームラン! サヨナラ勝ちだぁ!!」

 目を輝かせた彼が千秋の手を取った。紅葉とチアのメンバーたちが赤いポンポンを宙に放り投げた。応援団は老いも若いも一緒になって手を取り合い、肩を抱き合って喜びを分かち合った。

 スタンド中が敵味方関係なく声援を送る光景に感極まり、泣き笑いをしながら茅野くんと一緒になってとびはねた。