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フリーソウルズ2

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Scene.60
姫君ライブ

姫君コールが止み割れんばかりの拍手と歓声が沸きおこる。
交差するライト。
姫君の4人がステージに登場する。
「やったー!」と喜ぶファンたちに手をあげて応える真凛。
MCなしでいきなりライブは始まる。
ドラムの早打ちがイントロの”Statue of Liberty"で会場はいっきにボルテージがあがる。
オタクなファンたちは、推しの名を叫びながら狂喜乱舞する。
「灌北アリーーーーナァァァ!」
1曲目が終わり、姫君が煽る。

ひめ   「きょうは、姫君史上最高のライブにするからなァァァ!」

2曲目”Go Your Way"、3曲目"TWO TOP"、4曲目"Talk about it"、5曲目"Lion'
s Share"6曲目の"Straight Heart"が終わっる

真凛   「ラストォ、盛り上がっていくぞー!(マイクを通さずに観衆を煽る)」

"He may gimme!"
"ひーめーぎーみー!"
のコールアンドレスポンスで始まる"He May Gimme!"。
会場全体が一体となり飛び跳ね、うねる。
綾乃のギターテクが冴える。
ファンたちが踊り狂う。
歓声と熱気はこの日最高潮に達する。
鳴りやまない拍手とともに姫君のライブは終演する。
ほとんど間を置かずカツたち熱狂的ファンからアンコールの掛け声が響く。
そのステージに亡霊の如く登壇するカモ。

カモ   「(緊張気味に)ここから少しお時間を頂きます。僕は灌北大学超科学研究会の部長をやってます、鴨池です」
カツ   「(カモが言い終わらないうちに)姫君を出せ!(ヤジる)」
カモ   「このコーナーが終わったら、もしかしたら姫君さん出てくれるかも、しれません」

舞台袖からカツたちにだけ伝わるように手を合わせて合図を送るひめ。
不満げながらも引き下がるカツ。

カモ   「それでは、こちらをご覧ください」

そう言って舞台袖に姿を消すカモ。
オーロラビジョンが稼働する。
ビジョンにユアトの顔がうかびあがる。

ユアト  「ユアトです。きょうはこのステージにあがるつもりでしたが、諸事情でこういう形になりました。期待していた方々には心からお詫びします。ごめんなさい。しかし、僕がそちらに行っても話すことは二言三言。きょうの主役はこの方です」

ビジョンが暗い映像に切り替わる。
深夜の山道を移動する車の中から撮られた風景。
前方に仄明るい小さな光が見える。
その光は一瞬にしてブワっと画面いっぱいに広がる。
眩しい真っ白な映像の中、うっすらと人影が浮かんでいる。
鉛筆画のような頼りない輪郭をした足に、指を伸ばした手が忍び寄る。
眩しい白が消えて、ふたたび暗い風景。
車内灯に疲れきった裕司の横顔が照らされている。
窓の外を見ながら、裕司が言う。

裕司   「何だったんだろう、あの光」
ユアト  「裕司くんはUFOとか見たことある?」
裕司   「UFOなんですか、あれ?」
ユアト  「未確認飛行物体だからね、UFOって。だからそうじゃない?」
裕司   「宇宙人?」
ユアト  「うん、地球外知的生命体っていうのかな。これは僕の持論だけど、UFOが人間を誘拐するのってきっとチェザルモを狙ってるんだと思う。ゼーレに興味があって、強いゼーレを持っている者が狙われる」
裕司   「全然理解できない・・・」

映像に少し明るさが増す。
明け方の市街地。
街角に車が停まる。
犬を抱いたユアトが、動物病院の看板を掲げた建物に入っていく。
映像が車内に切り替わる。
スマホを耳に当て電話をしている裕司。

裕司  「えっ?(驚いた顔をし)嘘でしょ(作り笑いをする)マジで・・・マジかよ・・・」
裕司のスマホを持つ手の力が抜ける。
裕司の手から落ちるスマホ。

白い壁の部屋。
そこに並べられた犬のケージ。
そのひとつがズームアップされ、ケージに横たわるジローをとらえる。
ジローが立ちあがりカメラに向かって元気よく吠える。

敦木駅前交差点で事故の巻き添えで植え込みに弾き飛ばされる男子高校生。
画面にまたユアトが表れる。

ユアト  「ユアト_ラストインパクト。主役は、椿谷裕司くんです」

会場がざわつく。
灌北アリーナの会場最後方にかろうじて入場できた佐賀が色めき立つ。
ピンスポットライトがフロアの柱影にいるひとりの若者を照らしだす。

ユアト  「どうぞ登壇してください」

ユアトの声とともにビジョンにケージの中で吠えるジローが映しだされる。
混雑した会場に紛れこんでいる裕司。
ユアトの暗黙の駆け引きに困惑と躊躇の裕司。
渋々ながらステージに向かって歩を進める裕司。
フロアの来場者たちが、裕司のために道を空ける。
つま先立ちになって移動する裕司の頭を目で追う佐賀。

カモ   「どうぞ」

ステージ上のカモが裕司に登壇を促す。
衆目が集まる中ステージに立つ裕司。
戸惑いと恥ずかしさで縮みあがる思いの裕司。

ユアト  「裕司くん、この映像は全世界に配信されています。今あなたが悩んでいること、困っていることがあれば、誰かが助けてくれるかもしれない。今あなたがみんなに言いたいことがあれば、全国に伝わります」

画面からユアトが消えジローの吠え声はミュートする。
張りつめた空気が会場を支配する。
裕司にマイクを手渡しステージをおりるカモ。
静まり返った聴衆を前にひとりステージに立つ裕司。
重たい口を開いく裕司。


作品名:フリーソウルズ2 作家名:JAY-TA