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フリーソウルズ2

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Scene.43
大島へ

ゆりかもめの駅を背に竹芝埠頭からジェットホイール船に乗りむ真凛。
埠頭を離れる船。
電池の切れたスマホを握りしまたままデッキの上から外洋をぼんやり眺める真凛。
真凛を乗せたジェットホイール船が伊豆大島岡田港に着く。
伊豆大島に上陸する真凛。
店名は憶えていたが住所も電話番号も地図も記憶にない真凛。
港周辺にそれとわかる案内板はない。
間口の広い土産物屋の店先に立つ中年女性にダイビングショップについて尋ねる真凛。
ナイッアと訊いても首をひねるばかりで曖昧な返答を繰り返す中年女性。
開店前のスーパーマーケットの駐車場に場所を移す真凛。
360度周囲を見廻して叫ぶ真凛。

真凛   「レオ!!!!!」

電柱に取り付けられた防犯カメラのランプが赤く光る。

真凛   「助けてくれ〜!! ナイッアはどっちだ!!」

しばらくして”10時開店です”というスーパーのデジタル看板の文字が消える。
”右500mY字左800m”という文字にデジタル看板が切り替わる。

真凛   「サンキュー、レオ!」

言うなりは駆けだす真凛。
スーパーマーケットの前道を右に行くとほどなく道が二手に分かれる。
迷わず左側の道を選び海岸伝いを駆け続ける真凛。
海岸沿いにぽつりぽつりと店や家屋が立ち並ぶ。
その道の先に南国を思わせるシュロの木が2本見えてくる。
木の下に”ナイッアダイビングショップ”というカラフルな看板が出ている。

真凛   「あった!!」

走るスピードを緩める真凛。
建物の外壁はペンキを塗った板壁。
木製のテラスに数着のウエットスーツが干してある。
前庭には簡易なシャワーもありシャワーヘッドから水滴が滴りおちる。
壁際には封緘した数本のエアタンクが整然と立てかけある。
ショップの玄関にOPENの木札がぶらさげてある。
窓越しに立ち働く人影が見える。
”中に香織がいますように”と祈りながらショップのドアを開ける真凛。
店内には水中マスクやフィンが並ぶ棚と大きなテーブル。
壁際に受付のカウンターらしきものがあるが人はいない。

真凛   「あのぉ・・・」

店内を見渡しす真凛。
屈んで商品を整理していた女性が来訪者に気づく。

店員   「いらっしゃいませ」

店員は日焼けした肌にブロンドの長髪を胸元に垂らしている。
店内はその店員だけしかいない。
真凛を見て一瞬戸惑ったような表情を浮かべる店員。
真凛の顔は痣だらけで手には包帯を巻いている。

店員   「(気をとり直して)ご予約いただいているお客様ですか」
真凛   「香織さん。童門香織さんはいますか」
店員   「童門香織さん? お友達ですか?」

童門香織は確実にここに来ているに違いないと確信する真凛。

真凛   「はっ、はい・・・(上気する)」
店員   「珍しいお名前ですから、憶えています」

カウンターに入りタッチパネルを操作して壁掛け時計を見る店員。

店員   「もう桟橋を出てますね。今頃ダイビングスポットの着いている頃かしら」
真凛   「えっ、もう沖に出てる?」
店員   「(微笑みながら頷き)お友達を心配なさって来られたんですか?」
真凛   「ええ、まあ・・・」
店員   「大丈夫、深いところには潜りませんから」
真凛   「あぁ・・・。そこに行くにはどうしたら・・・」
店員   「ご心配なく。ベテランの店長と経験豊かなインストラクターの2名が同行しています」
真凛   「船はないんですか?」
店員   「(暫し考えて)あいにく・・・。あと1時間もしたら戻られると思います。お掛けになってお待ちください(真凛に椅子をすすめる)」

あと1時間待つことが正解なのか?と自問する真凛
じっと座って待つこともできず店内をブラつくつき歩きまわる真凛。
するとカウンターの上に見覚えのあるアクセサリーが真凛の目に入る。
シルバーのイルカのピアスが一対レジの横にぽつんと置かれている。

真凛   「これは?」
店員   「あ、これ童門様の。更衣室に置き忘れてあったもの。本人に確かめてからと思って」
真凛   「彼女、私物は?」
店員   「ほとんど持っていらっしゃらなくて・・・」

テーブルの上に炭酸水の入ったグラスを置いく店員。
店の窓から外を眺める真凛。
はるか水平線まで真っ青な海が広がっている。


作品名:フリーソウルズ2 作家名:JAY-TA