フリーソウルズ2
Scene.40
真凛スタジオ
真凛 「痛ーっ!」
ネック持ちあげたレスポールを脇腹を庇いながらスタンドに戻す真凛。
スタジオスウェイドに"姫君"の4人が揃っている。
うらら 「無理なんじゃない、真凛」
スネアドラムを軽く鳴らすうらら。
額に絆創膏、右手に包帯、唇も腫れている真凛は様にならない笑顔を作る。
真凛 「あと2日。2日あれば治る」
綾乃 「無理しないでください、真凛さん」
心配そうな表情の綾乃。
真凛 「学園祭に間に合わせるから」
と言いつつギターのネックを握ることすらできない真凛。
肋骨のあたりがギリギリと痛み顔をしかめる真凛。
真凛 「ベーススライン、キーボードで弾くか」
スツールをキーボードの後ろに置いて座る真凛。
真凛 「よし、行くぞ」
いつもの陽気な真凛ではなくカラ元気な真凛であることに気づいているひめ、うらら、綾乃。
ひめ 「真凛」
キーボードの前に立ち真凛に面と向かうひめ。
ひめ 「無理よ。あなたは引きずってる」
真凛 「えっ? キョーイチのこと?」
とぼけた仕草をする真凛。
ひめ 「山本くんは気の毒だったわ。でも違うでしょ、真凛」
真凛 「何のことさ?」
ひめ 「香織さんのこと」
真凛 「彼女は関係ない。終わった」
ひめ 「終わってない」
真凛 「何にもしてやれないんだよ。俺はバカで無力なんだ」
ひめ 「学園祭は、3人で出る」
真凛 「ベースはどうすんだ?」
ひめ 「マシンでなんとかする」
真凛 「俺は・・・?」
ひめ 「行きなさい」
真凛 「どこへ?」
ひめ 「香織さんのところ」
真凛 「いやぁ無理でしょ、今さら」
ひめ 「無理じゃない。今の真凛を、うららも綾乃も心配してる。あたしも」
真凛 「俺は・・・大丈夫だよ」
左手の指先で鍵盤を叩く真凛。
真凛の手を制するひめ。
ひめ 「あなたのためじゃない」
真凛 「・・・?」
ひめ 「香織さんのため」
涙目になるのを堪える真凛。
真凛 「ひめ、俺ひとりじゃ無理。無理なんだよ。ひめ、あんたも一緒に・・・」
ひめ 「それはできない」
真凛 「どうして? 学園祭か?」
ひめ 「そうじゃない。あたしが何を言っても聞く心づもりがない人には伝わらない」
真凛の手を両手で包みこむひめ。
ひめ 「真凛、あなたが香織さんをこのスタジオに連れてくるの」
真凛 「(伏し目がちに)できるかなぁ?」
真凛の顎に指をかけ目線をあげさせるひめ。
ひめ 「好きなんでしょ、香織さんのこと」
潤んだ瞳から大粒の涙をこぼす真凛。