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フリーソウルズ2

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Scene.39
対決矢沢

視界の隅で動くものに反応する真凛。
雑居ビルの入り口付近に女性の影が動く。

真凛   「キョーイチ、出てきた」

デニムジャケットを着た女性とサテンのカーディガンを羽織った女性。
ふたりの女性を凝視して恭一に確認を求める真凛。

恭一   「背の高いほう、白っぽいカーディガンがそうです」

恭一の答えを聞くや否や店を飛びだす真凛。
手早くテーブルを片付けて慌てて真凛を追いかける恭一。
デニムジャケットを着た女性は迎えのパジェロに乗って夜の街に消える。
パジェロを見送るってひとり駅の方向に歩きだす香織。
香織の耳元にドルフィンが光る。
さりげなく香織に近寄る真凛。
雑居ビルの前に真凛を遮るように一台のセダンが停まる。
漆黒のマークXである。
ドアが開き後部座席から矢沢が降りてくる。
ギブスで左の前腕を固定しそれを白い三角巾で首から吊っている。

真凛   「あいつ・・・(呟く)」
矢沢   「香織!(呼びとめる)」

矢沢を無視して歩き続ける香織。

矢沢   「香織! ちょっと待てよ!」

矢沢をちらっと見て無言の香織。

矢沢   「話があんだよ」
香織   「あたしはない」
矢沢   「ほら、これ」

首から吊った左腕をほんの少し動かす矢沢。

香織   「おおげさな・・・」
矢沢   「これじゃ大会にも出られないし、治療費もかかるんだよね」
香織   「お気の毒さま」
矢沢   「勘違いするな。お金の話じゃない。実はさ、俺の兄貴がお前のこと気に入っててな。頼む。ひと晩酒の席付き合ってやってくれないか。そしたら俺の・・・」
香織   「断る」
矢沢   「頼むよ。ほんといい兄貴なんだよ」
香織   「サイテー」

吐き捨てて背を向ける香織。
香織の腕を片腕で掴む矢沢。

矢沢   「待てよ、話は終わってない」

無理やり車に引きずりこもうとする矢沢。
抵抗する香織。
香織の悲鳴が真凛の耳に届く。

真凛   「(恭一に)お前は手を出すな」

言い残して矢沢に向かって突進する真凛。
真凛の頭突きを腹に受けて路上に尻餅をつく矢沢。
顔をしかめながら頭突きの主を見る矢沢。
見覚えのある顔である。

真凛   「消えろ! クソ野郎!」

その女子が江の島のJKだと確信を持つ矢沢。

矢沢   「お前、あのときの・・・」

矢沢を睨みつける真凛。
唐突に現れたJKに驚く香織。

真凛   「香織さんから手を引け、矢沢」

香織と真凛を見較べる矢沢。

矢沢   「お前ら知り合いか?」
真凛   「おう」

首を横に振る香織。

矢沢   「どうなってんだ?」
真凛   「香織さん、帰っていいよ」
矢沢   「待てよ。ちょうどよかった、ネェちゃん。治療代と慰謝料払ってもらおうか」

立ち上がって真凛に顔を近づけて凄む矢沢。

真凛   「いちゃもんつけてんじゃねぇ!」

拳をが矢沢のみぞおちに打ちこむ真凛。
うっと身を屈める矢沢。
すかさず真凛の襟首を掴む矢沢。

矢沢   「調子に乗るじゃねぇよネェちゃん(真凛の首を絞めあげる)」
真凛   「痛い目見たいのはどっちかな」

反動をつけ矢沢の股間に膝蹴りを喰らわす真凛。
思わず腰を屈めて後ろを向く矢沢。
向き直る勢いで左前腕のギプスを振り回して真凛の顔面にヒットさせる矢沢。
真凛の身体が宙に浮きそして地面に落ちる。
ちっ、と真凛に唾を吐きかける矢沢。
ふたたび香織の手首を掴む矢沢。

真凛   「待てよ、クズ」

口元から血を流しふらつく足で矢沢に立ちはだかる真凛。
呆れながらも怒りの表情を露わにする矢沢。

矢沢   「俺、女だからって手加減しないタイプだかんね」

真凛の背後に回り真凛の喉元を締める矢沢。

香織   「やめて!(わめく)」
矢沢   「人目は避けてやるよ」

ビルとビルの間の路地に真凛を引きこむ矢沢。
”俺は死なない”と呟く真凛
暗い路地裏。
気絶寸前まで矢沢に打ちのめされる真凛。
小便臭い路地裏にぼろ雑巾のように打ち捨てられる真凛。
勝ち誇った顔で真凛を路地裏に放置する矢沢。
呆然と立ち尽くす香織の手をみたび掴む矢沢。
返り血を浴びている矢沢の手を拒む香織。

真凛   「手を離せ、クズ(血だらけの口で言う)」

目を腫らし服は破れ額から血を流した真凛・
路地の入口に亡霊のように立つ真凛。

矢沢   「しつけぇネェちゃんだな」
真凛   「俺のこと、ネェちゃんって呼ぶな」
矢沢   「死にたいのか、ネェちゃん」

ポケットの中の固いものを探る矢沢。

真凛   「香織さんからそのきたねぇ手を離せって言ってんだろうが!(矢沢に襲いかかる)」
恭一   「やめてください!(止めに入る)」

グサッ!と鈍い音がする。
脅しのつもりで出した矢沢の果物ナイフを恭一が胸で受けとめる。
ナイフの切っ先が恭一の心臓付近に突き刺さる
恭一の着ていたTシャツのフロントがいっきに血の赤に染まる。
狼狽える矢沢。
恭一の胸からナイフを抜く矢沢。
どうして良いかわからずナイフを地面に捨てる矢沢。
バタン。
それは恭一が崩れ落ちる音でありマークXのドアが閉まる音である。

真凛   「キョーイチ!」

かろうじて恭一の後頭部を受けとめる真凛。
地面に横たわる恭一の身体から真っ赤な血が止めどなく流れる。
マークXのウィンドウが閉まる。
静かに走り去るマークX。
矢沢   「兄貴・・・」
真凛   「しっかりしろ!」

血の気が引いて目が塞ぎかかっている恭一の頬を叩く真凛。

「キョーイチ、俺を見ろ!」

うっすらと目を開き力なく口を開く恭一。

恭一   「真凛さん・・・(口から血が溢流する)」

恭一の頭を横にする真凛。
地面に血を吐く恭一。

真凛   「救急車! 誰か救急車!!」

近くに立つ香織に哀願する真凛。
恭一はかろうじて聞き取れる声で真凛に言う。

恭一   「お願いがあります、真凛さん」
真凛   「大丈夫、キョーイチ、聞いてる」
恭一   「もし真凛さんが普通の真凛さんに戻ったら、僕と付き合ってくれますか」

途切れ途切れに言い終えると静かに目を閉じる恭一。

真凛   「ダメだ!」

恭一の意識を引き留めようと恭一の頬を叩く真凛。

恭一   「(目を閉じたまま)だめ・・・なん・・・です・・・か・・・」
真凛   「そうじゃない。いいよ。付き合ってやるよ。結婚しよう。一生お前にそばにいてやるよ」

真凛の言葉は恭一に届かない。

真凛   「キョーイチ!」

恭一の肩を揺さぶる真凛。
恭一の目も口も動かない。
真凛の腕の中で静かに息を引き取る恭一。
しばらく恭一の身体を抱いて涙を流す真凛。

真凛   「キョーイチ。なんでお前みたいないい奴が死ななきゃならないんだよ」

やがて怒りにうち震える真凛。
傍らで仔犬のように怯えている矢沢。
逃げようとする矢沢。
矢沢にタックルする真凛。
戦意を失っている矢沢は真凛に簡単に倒される。
矢沢に馬乗りになって矢沢の顔面を殴る真凛。
顔を手で覆って防御するだけの矢沢。
矢沢の顔や手を泣きながら殴り続ける真凛。
頭を抱えずるずると後ずさりする香織。
作品名:フリーソウルズ2 作家名:JAY-TA