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フリーソウルズ2

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Scene.21
イノシシ

敦木警察
市民からの110番が受信される。
相模川の土手でイノシシらしき動物を見たという市民からの通報である。
目撃者は相模川でアユ釣りをしていた釣り人と地元のラーメン店主。
通報を受けて出動する大下・
大下以下3名が2台のパトカーに分乗し目撃された現場に向かう。
堤防沿いの側道にパトカーが停まる。
河川敷を見おろす大下。
河川敷に確認できる動物はいない。
同乗していたもうひとりの警官と手分けして周辺を捜索する大下。
佐賀を乗せた警察車両が相模川に架かる相模大橋を通りがかる。
土手にパトカーが2台停まっているのを見つける佐賀。

佐賀   「(同僚に)何かあったのかな」
同僚   「(土手の方をちらっと見て淡泊に)さあ・・・」

河川敷で何かを捜しているような大下の姿を車の窓から認める佐賀。
橋のたもとの赤信号で車が停まったところで車から降りる佐賀。
椿谷裕司の腐乱死体だけは勘弁してくれと念じる佐賀。
土手を駆けおりて大下に声をかける佐賀。

佐賀   「大下巡査、何か事件ですか?」
大下   「あ、これは佐賀警部補。本庁研修お疲れさまです」
佐賀   「ほんと、疲れたよ。ところで、あの少年の手がかり?」
大下   「いえ、その・・・」
佐賀   「何なの?」
大下   「イノシシ・・・」
佐賀   「イノシシ?(声が裏返る)イノシシが出たの?」
大下   「らしいです。通報がありまして。本当かどうか疑わしいのですが・・・」
佐賀   「それで緊急出動か」
大下   「どうしてこんな街なかに?」
佐賀   「ふつう山で食いっぱぐれて、農作物を荒らすっていうけどな」
大下   「今年は日照り続きでしたから、きっと・・・」
佐賀   「山の食物は喰い尽くしたか。にしても山からここは遠い」
大下   「そこなんすよね」

土手を駆けおりてくる警官A。

警官A   「目撃者から話が聞けました。野犬などではなく、確かにイノシシだったと」

目撃者が描いたというけものの絵を大下に見せる警官A。
写実的な絵ではなかったが、イノシシと推認できる絵だった。

警官A   「びっくりして逃げたら、追っかけてきたと」
佐賀   「こえー!(他人事のように呟く)」

2頭のイノシシが河川敷を下流方向にうろつきながら移動していたという目撃談を大下に報告する警官A。

大下   「いやぁ、本当にイノシシなんだ・・・」
佐賀   「初めてかなイノシシ。いや赴任した直後に数回あったか。20年以上前だ」
大下   「イノシシなんてどうやって捕まえるんですか。教えてくださいよ、佐賀警部補」
佐賀   「俺も知らないよ」
大下   「どっか遠くに行ったって、報告しちゃおうかな」
佐賀   「おいおい、もし駅前の飲食店街に現れたらどうする? 残飯あさるっていう      ぜ」
大下   「勘弁してくださいよ」
佐賀   「市民の生命財産を守るのが務めでしょ」
大下   「忙しいんすよ。イノシシどころじゃない」
佐賀   「あれか」
大下   「あれです」
佐賀   「だよな。俺もあれで東京に呼ばれた」
大下   「益岡先生、次の総裁選出馬するの、本当なんですかね」
佐賀   「次は無理そうだけど、狙ってるのは確かだな」
大下   「なんかあの先生、敵多いからな」
佐賀   「言うね、大下くん。地元の大先生だよ」
大下   「だから困ってるんです。いろいろ注文が多いと、うちの課長も頭抱えてて」
佐賀   「たしか来週だっけ、市民会館」
大下   「そうなんです。高速からの導線に警備つけろとか、客の身体検査やれとか」
佐賀   「そこにイノシシか」
大下   「手伝ってくださいよ、捕まえるの」
佐賀   「やだよー。怖いし。それに安全課の仕事邪魔しちゃ悪いし」
大下   「悪くないですよ」

警察無線が入ったことを知らせる報知音が鳴る。
大下の傍にいた警官Aが車に戻る。
大下に会って話す理由を思いだした佐賀。

佐賀   「そうそう、あの子、どうなった? 捜索願の」
大下   「気になりますか?」
佐賀   「気になるから聞いてるんだ」
大下   「群馬県警から連絡がありました。金精峠のトンネル出口に25cmのスニーカーが落ちていたと」
佐賀   「それで?」
大下   「失踪人の靴かどうか・・・」
佐賀   「かどうか・・・?」
大下   「まだ特定できていません」
佐賀   「何やってんだよ」
大下   「だから、イノシシ・・・」

パトカーから戻ってくる警官A。

佐賀   「大下さん」

大下の顔を見たきり言葉を継げずにいる警官A。

大下   「(警官Aに)どうした?」
警官A   「ツイッターに写真があがってるそうです」
大下   「ほう、市民からの情報提供か」
警官A   「東名高速の橋脚の下で撮られた写真。イノシシが5頭写っていたそうです」
大下   「5頭?」

ひとり土手を離れ徒歩で駅のほうに向かう佐賀。
駅前の交番でツイッターにアップされているイノシシ写真を見ながら巡査と話す佐賀。
駅前の交差点で3人の男子大学生らしき若者がスマホを手に談笑している。
ひと組だけではない。
交差点の角コーナーに都合3組の若者グループがいる。
行き交う車と手元のスマホを見較べて話している。
不在の間に若者が興味を惹くような事案でもあったのか?と興味を惹かれる佐賀。
そのひと組の会話に耳を傾ける佐賀。
たしかに交通事故の話をしている。
若者グループにすり寄る佐賀。

佐賀   「何かあったの?」

佐賀が醸し出す険しい雰囲気に一瞬ひるむ若者。

若者A   「いえ、別に・・・」
若者B   「ユアトの言ってることが本当かどうか・・・」
佐賀   「ユアト?」
若者A   「(スマホの画面を佐賀に見せて)ちょっと前にあった事故の映像なんですけど・・・」

その映像が3か月前にあった多重連鎖事故だと認識する佐賀。

佐賀   「ちょっとよく見せて」

YouTube動画である。

佐賀   「なんでこれが?」

引っかかるものを感じる佐賀。
投稿者のユアトという人物に心当りはない佐賀。

佐賀   「(若者に)ユアトって誰?」



作品名:フリーソウルズ2 作家名:JAY-TA