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子供たちが……ライダー!

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「この事件、怪しいと思わないかね?」
 スナック・アミーゴの2階はスタッフの休憩室兼ライダーチームの作戦会議室になっている、既にチームの面々が揃っている中、おやっさんがソファに身を投げ出しながら言った。
「そうですね、やはりショッカーの仕業と考えておいた方が良いでしょうね」
 隼人の言葉に一同が頷いた。

 おやっさんの言う『事件』とは子供たちが大勢行方不明になっている事件、サンタの扮装をした男が笛を吹きながら歩き、子供たちが夢遊病者のようにその後に続いていたと言う目撃情報もある。
 しかし今は12月も下旬、町にはサンタの扮装をした者が溢れている、笛吹き男がその中にいるのか、いたとしてもそれが誰なのか特定するのは難しい。
「手分けして街中のサンタたちに怪しい動きがないか見張るしかないでしょうね」
 丈二にしては単純な人海戦術的アイデア、だがそれより外に有効な手段は見つからない、早速チームの面々がクリスマス商戦で賑わう街に散って行った。

「どうだった?」
 翌日の会議、おやっさんが、チームが集めて来た情報をまとめようとそう切り出した。

「私のところでは特に怪しいことはなかったですね、どのサンタもプラカードを持って突っ立っているだけで」
 と丈二。
「私のところも同じようなものです、カンバッジを配っているサンタはいましたが」
 隼人がそう言うと、剛も続いた。
「俺のところもそうだったな、カンバッジをチラッと見たが、ドラ〇えもんが描かれたもんで、タダで配ってても不思議ないものだったし」
「あたしのところでもカンバッジ配ってたわ、こっちはアン〇ンマンだったけど」
「こっちはプリ〇ュアのよ」
 志のぶと晴子もバッジのことを口にした。
「そのバッジは調べてみる必要があるな……」
 丈二がそう言うと、晴子が続いた。
「じゃあ、施設の子供たちにそのバッジを貰ってくるように頼んでみるわね、大人には配らないでしょうから」
「そうしてくれ、頼んだよ」

「やはりな……これは誘導装置だ、眠っている子供たちを笛の音で操っているんだろう」
 手に入れたバッジを分解すると中から小さな機械が現れたのだ。
「でもこれってショッカーの仕業かしら? 子供達を集めて何をしようとしてるのかわからないけど……」
 志のぶの意見に一同は考え込んでしまった、子供時分から戦闘員を育て上げようとするほどショッカーは気が長くない。
「ああ見えてショッカーは待遇がまあまあなんだ、刑務所から出たけれど働き口のない荒くれならごまんといるからな、人手不足とも思えないんだが……」
 ショッカーの内部事情に詳しい剛も否定的な意見だ。
「だが、何者かが誘導装置を使って子供たちを誘拐していることは間違いないんだ、その現場を抑えれば何かわかるだろう、深夜にご苦労だが手分けして見張ってくれ」
 おやっさんの考えに一同は力強く頷いた。
 
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「笛を吹くサンタを見つけた、子供たちが誘導されてる」
 隼人からの無線連絡に、一同は隼人の元に駆け付けた。

「おい、何者かも何が目的かも知らないが、その笛を吹くのを止めてもらおうか」
 ライダーチームが一列になって笛吹きサンタの前に立ちはだかる。
「出たな、ライダーども……そろそろ現れる頃だと思っていたよ」
 笛吹きサンタが衣装や白髭をかなぐり捨てると、中からピエロのような恰好をした男が現れた。
「まるでハーメルンの笛吹き男だな」
「その通り、だが俺はただの伝説上の人物ではないぞ」
「やはりショッカーか? 子供たちを誘拐して何を企んでいる?」
「その答えは身をもって知るが良い」
 笛吹き男が別の曲を吹き始めると、街角に潜んでいた戦闘員がわっと群がる……だがいつもとはずいぶんと様子が違う。
「ち……小さい」
「これは誘拐された子供達だな?」
「くそっ、戦闘員の姿をしているとは言っても子供は殴れねぇよ」
「私もだ、子供を蹴るわけには行かない……晴子ちゃん、何とかならないか?」
 ライダーが晴子に助けを求めるが……。
「そう来ると思っていたぜ、だから先に手は打ってある」
 笛吹き男が言う通り、身体能力的にはいたって普通、と言うよりむしろ小柄で非力なくらいの晴子には真っ先に子供たちが群がっていて既に身動きが取れなくなっている。
「ははは、どうだ? 子供たちのヒーローとしては手も足も出せまい」
「く……子供たちをこんなことに使うとは……卑劣な」
「まあ何とでも言え、卑劣だの非道だのと言ったものは誉め言葉と受け取ろう」
 笛吹き男はさらに高い音程の曲を吹き始める。
 すると……。
「うわぁぁぁぁ……」
「うぐぅぅぅぅ……」
「ぐわぁぁぁぁ……」
「あぁぁぁぁぁ……」
 ライダー、ライダーマン、マッスル、レディ9がその音を聞いて苦しみ始める。
「ふふふ……聴覚が増幅された貴様らにはこの超音波攻撃は耐えられまい」
 笛吹き男は勝ち誇ったように言い、更に高い周波数の音で攻撃するが、子供たちに囲まれたライダーたちには反撃の手段もなく悶絶するばかり。

(ああっ耳が痛い、頭がくらくらするわ……でもライダーたちはもっと苦しめられてるはず、このままじゃやられちゃう……)
 今動けるのは唯一普通の聴覚しかない晴子のみ、子供たちに体の自由を奪われてはいたが何とか一枚のお札を取り出すことに成功し、呪を唱えた。

「おやまぁ、あたしを呼び出すとは珍しいねぇ」
 現れたのは白髪に灰色の肌の老婆だ。
「お前は誰だ、なぜ超音波攻撃が効かない!」
 笛吹き男がそう叫ぶ。
「あんだって? もっと大きな声で喋ってくれないと聞こえないよ」
「お!ま!え!は!だ!れ!だ!?」
「あたしかい? あたしは砂かけ婆さ、歳を取ると耳が遠くなってねぇ」
「な!ぜ!ちょ!う!お!ん!ぱ!が!き!か!な!い!?」
「あんだって? よく聞き取れなかったよ」
「な~!!ぜ~!!ちょ~!!う~!!お~!!ん~!!ぱ~!!が~!!き~!!か~!!な~!!い~!!?」
「あいにくだねぇ、歳を取ると高い音が聞こえなくなってねぇ」
「はぁはぁ……どうして簡単な質問にこんなに苦労しなくちゃならんのだ……ふん、だが超音波が効かなくともまだ攻撃手段ならあるわ、婆一人恐れるまでもない」
 笛吹き男は笛の先に何やら仕込むと大きく息を吸い込んだ、その瞬間、砂かけ婆が歳に似合わない迅速な動きを見せ、手にした籠から砂を投げつけた。
「うわっ! 目つぶしか? 危なかったが効いてないぜ、食らえ!毒吹き矢攻撃! ぷっ! ど、どうした? なぜ毒矢が出ない?」
「そんなこったろうと思ってね、笛の先に砂を詰めさせてもらったよ」
「あっ、婆ぁ! ちゃんと聞こえてるんじゃねぇか!」
「ひひひ、ちょっと時間を稼がせてもらっただけさね、でも高い音が聞こえないのは本当だよ」
 その時だ、苦しんでいたライダーが立ち上がった。
「……笛吹き男、お前の負けのようだな……」
「ライダー! どうして……」
「砂かけさんのおかげでしばらく笛を吹くのを止めていただろう? まだ頭が少しクラクラするがもう動けるぞ」
「子供戦闘員は……」
作品名:子供たちが……ライダー! 作家名:ST