大罪人
「魂は本来、世俗の欲に囚われず、地道に善行や功徳を積んでこそ 救済されるもの。それが<至高の存在>のお教えの筈──」
沈黙したままのラムスイの目を、私は覗き込む。
「ところが貴方は『教会にお金を積んで祈ってこそ 魂は救済される』と、説いて回りましたね?」
「わ、我が宗派の勢力を伸ばし…あまねく<至高の存在>の栄光を世間に知らしめるための方便じゃ……」
「だからといって、正しい教えを冒涜する事など 許されません」
「で、では…吾輩は」
ラムスイの顔面は蒼白になった。
「お、落とされるのか? <地下界>に──」
「ご安心下さい。貴方の功績を鑑みた<至高の存在>から、お慈悲を賜っております」
「…おお。」
「<告解域>で、不眠不休・飲まず食わずで 666年と6ヶ月、<至高の存在>を讃える行で徳を積めば、特別に<天上界>に入る資格を与えるとの事です」
「ろ、ろっぴゃく…」
「が、その前に貴方には 終わらせるべき贖罪があります。」
「…何故吾輩が、そんな事を──」
「貴方が広めた偽りを信じたおかげで、<天上界>に入れずにいる信者が大勢います。その者たちを救うために、貴方は 自分の罪を贖わなければなりません」
「ど…どうしろと……」
「今 向かっている場所は、<中間界>と<地下界>の間にある<虚空域>です。貴方にはそこで、1111年と11ヶ月 過ごして頂きます」
膝から地面に、ラムスイが崩れ落ちる。
「い、いっそ…<地下界>に落として……」
「曲がりなりにも<至高の存在>を讃える教えを説き 世間に流布した人間を、<地下界>に落とす事など出来ません。そんな事をしては、<天上界>の威信に傷が付いてしまいます」
顔を上げたラムスイに、私は微笑む。
「─ 何よりも、<至高の存在>が ひどくお怒りなのですよ。」