スーパーソウルズ
「お母さん、どうしたの? どうして泣いてるの?」
画面がふたたび切り替わり、水森家の仏間。
妙子に手を引かれてヒロトが入ってくる。
金紙や緞子で飾られた立派な仏壇に、水森コウキの遺影が立てかけてある。
妙子は膝をついてヒロトに正対すると、優しくヒロトに語りかけた。
「覚えてる? お父さんとお母さんと3人で桜川に遊びに行ったこと」
「うん」
ヒロトが頷く。
「ボールが川に入ってあなたが取りに行ったよね。浅瀬にあったボールがどんどん流されて、それを追っていくうちに、あなたも・・・」
「僕、うまく泳げなかった・・・」
「たくさん水を飲んだでしょ。苦しかったでしょ」
「苦しかった」
「ごめんね」
「えっ?」
「コウキは川で溺れて死んじゃったの」
「お母さん、変なこと言わないでよ。僕はここにいるよ」
「私のコウキはあそこにいる」
妙子は仏壇を指さした。
仏壇の須弥壇の上に、無邪気にほほ笑むコウキの遺影があった。
ヒロトは遺影の写真をまじまじ見つめて言った。
「この写真,イケてない。もっといい写真撮ろう、お母さん」
ヒロトは妙子の手を取り、引っ張った。
ヒロトの手を、妙子が掴み返して言った。
「あなたは水森コウキじゃない!」
「えっ」
ヒロトの身体がフリーズした。
「あなたは、ヒロトくん」
「えっ、なんで?」
「あなたは、黒田ヒロトくんだよね。ほら、あそこにヒロトくんのお母さんがいる」
妙子は、隣室に潜むように佇む佳穂を、指さした。
佳穂もまた、目頭をハンカチで押さえていた。
「違う。なんで、なんでお母さんまでそんなこというの」
ヒロトは涙目で妙子を睨んだ。
「聞いて、ヒロトくん」
「ぼくはヒロトじゃない」
「お願い・・・」
「やだ、やだ。ぼくは・・・ぼくは・・・」
妙子にすがりつくヒロト。
「やだ、やだ!お母さん!ねぇお母さん」
妙子はヒロトの顔を見つめて言った。
「私のコウキはもうこの世にはいないの。わかって、ヒロトくん」
「やだ、やだ!お母さん!お母さん!」
泣きじゃくりながら妙子の腕にしがみつくヒロト。
「お母さん、お母さん」
妙子の腕の中で泣きやまないるヒロトを、妙子は優しく、そして強く抱きしめた。
「ごめんね、コウキ。あなたを助けてあげられなくて・・・ごめんね・・・」
妙子の目から大粒の涙がこぼれ落ちた。