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スーパーソウルズ

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「痛ーっ!」
レスポールのネックを持ちあげて、真凛は脇腹を庇いながらスタンドに戻した。
スタジオスウェイドに"姫君"の4人が揃っていた。
「無理なんじゃない、真凛」
ドラムスティックを腰にさしたうららが言う。
額に絆創膏、右手に包帯、唇も腫れている真凛が喋りにくそうに言った。
「あと2日。2日あれば治る」
「無理しないでください、真凛さん」
綾乃がアニメ声で言う。
「学園祭に間に合わせるから」
だが真凛はギターのフレームを押さえることすらできなかった。
肋骨のあたりがギリギリと痛んだ。
「ベースライン、キーボードで弾くか」
真凛はスタンドチェアをKORGのキーボードの後ろに置き、座った。
「よし、行くぞ」
いつもの陽気な真凛ではなく、カラ元気な真凛であることに皆は気づいていた。
「真凛」
とひめがキーボードの前に立ち、真凛に面と向かった。
「無理よ。あなたは引きずってる」
「えっ? キョーイチのこと?」
と真凛はとぼけて見せた。
「山本くんは気の毒だったわ。でも違うでしょ、真凛」
「何のことさ?」
「香織さんのこと」
「彼女は関係ない。終わった」
「終わってない」
「何にもしてやれないんだよ。俺はバカで無力なんだ」
「学園祭は、3人で出る」
「ベースはどうすんだ?」
「マシンでなんとかする」
「俺は・・・?」
「行きなさい」
「どこへ?」
「香織さんのところ」
「いやぁ無理でしょ、今さら」
「無理じゃない。今の真凛を、うららも綾乃も心配してる。あたしも」
「俺は・・・大丈夫だよ」
真凛は左手の指先で鍵盤を弾いた。
ひめは真凛の手を制して言った。
「あなたのためじゃない」
「・・・?」
「香織さんのため」
真凛は涙目になるのを堪えてひめに言った。
「ひめ、俺ひとりじゃ無理。無理なんだよ。ひめ、あんたも一緒に・・・」
「それはできない」
「どうして? 学園祭か」
「そうじゃない。あたしが何を言っても聞く心づもりがない人には伝わらない」
ひめは真凛の手を握りしめた。
「真凛、あなたが香織さんをこのスタジオに連れてくるの」
真凛は伏し目がちに
「できるかなぁ?」
と呟いた。
ひめは真凛の顎に指をかけ、目線をあげさせて言った。
「好きなんでしょ、香織さんのこと」
真凛の目から大粒の涙がこぼれた。


作品名:スーパーソウルズ 作家名:椿じゅん