左端から見れば全部右寄り
24. 異世界ファンタジー『勇者アサヒ』
俺は勇者アサヒ、己(だけ)の正義を守るために日夜闘い続けている。
最大の敵は魔王アベだ、奴は自分の民のことばかり考えて周辺諸国の民のことなどこれっぽっちも考えない、それどころか自国の防衛隊を軍と呼び変え、争いをしないと定めた先人の憲法を変えようとすらしている、全く許せない、許すわけには行かないのだ。
魔王アベを倒すためなら手段は選ばない、俺の信条は『強きをくじき弱きを助ける』だ、理がどちらにあるかなど問題ではない、弱き者は助けなければならない、そうだろう? 何? 自分を信奉する者の利益ばかり考えているのだろうって? そんなことはないぞ、何? 信奉者を束ねて自分が王になろうとしてるのじゃないかって? そんなことは……ないぞ……いや、皆が俺を王に、と言うならば受けてやらないでもないが……。
「出たな! 魔王アベ! 今日こそ決着をつけてやる」
「また前か……いい加減に諦めて商売替えでもしたらどうだ?」
「偉そうな顔をしていられるのも今日限りだ、食らえ! イアンフ斬り!」
「無駄だ、その技はもう最終的かつ不可逆的な条約で封じてある」
「知ったことか!」
「全く約束も守れないと見える、だがその技はもう私には届かないぞ」
「ならばこれだ! チョーヨーコー突き!」
「それも無駄だ、フェイクと見切っている、私には当たらんぞ、もし当てでもしてみろ、こちらのザイカイが黙っちゃいない、貴様の首は即座に切り落とされるだろうよ」
「これならどうだ! レーダー照射!」
「お? やりやがったな」
「あ、違う、今のはお前の方から当たりに来……」
「なにをフザけたことを、貴様の攻撃など屁でもないが、それでもやると言うのなら相手してやるぞ」
「既にユシュツキセイを繰り出しているくせに白々しい」
「それはユシュツカンリだと言っておるだろう? だが相当に効いているようだな」
「なんの! ユシュツキセイを止めなければジーソミアをお見舞いするぞ!」
「その技は両刃の剣、貴様の方にダメージが大きいのがわからぬか?」
「そ、そんなことは……」
「ならばやってみるがよい」
「吠え面かくなよ! くらえ! ジーソミア!……ギャァ」
「そら見たことか、貴様に勝ち目はない、大義もない、嘘つきの卑怯者めが!」
「く、くそう……かくなる上は……」
「ほほう? どうする?」
「伝家の宝刀! 『天の声』だ!」
「ははは、そんなものとっくに地に堕ちているわ、それでも天の声を名乗り続けるとは、貴様も図々しさだけは人後(語)に落ちんな」
作品名:左端から見れば全部右寄り 作家名:ST