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2. 赤井左翼氏の日常



 今朝のことである、朝食に目玉焼きが出て来たのだが、なんと黄身が二つある、妻は『何だか得した気分でしょう?』などと言うが、私には二つ並んだ黄身がアベとアソウのように見えて仕方がない、なんとも嫌な気分になったが、『これもひとつの打倒アベ政権だ』と思いつつ平らげた。
 朝食の後はトイレである、アベ政権になってからというもの、どうもお通じが良くない、まるで今の政治のようだと思いながらなんとか気張って用を足し、トイレットペーパーを取ろうとすると、残り少なくなったペーパーはカラカラと空虚に回る、それを見るとついつい国会を思ってしまう、アベが素直に過ちを認めればカラ回りなどしないものを……。
 トイレの後は洗面、鏡を見るとどうも最近血色が良くないように見える、心労が溜まっているのだろう、これと言うのもアベ政権のせいに違いない。
 歯磨き粉は大分前からアク○フレッシュと決めている、多様性を象徴しているようで実に心地良いのだ、二重国籍でさえ容認できない日本人は、すべからくこの歯磨き粉を使うべきだと思ってしまう、アベ政権が続く限りそんな日は来ないだろうが。
 出社すべく駅に向う。
 ホームに出ると今日も人、人、人の波、こんなに多勢の日本人に囲まれ、押し合いへしあいしながら会社に向わなければならないのは苦痛以外の何物でもない、いっそのこと東京にミサイルの一発でも落としてくれたらだいぶ人が減って快適になるだろうと思うのだが、アベ政権はそれができるであろう唯一の国に冷たい、経済制裁の報復に、せめてバンバン拉致してくれたらと思ってしまう。
 
 一日の仕事を終えて駅に向う、駅前にはあのお方の懐を潤すことが出来る遊戯施設が盛大に威勢の良い音楽を流している、私は吸い込まれるようにその施設に入り、今日もまた諭吉を一枚寄付した。
 全く以て、『脱亜論』などと言うふざけた文章を書いた男の肖像を紙幣の図柄に使うなど、どういう了見なのか理解できない、諭吉など手元から消してしまうに限るのだ。

 家に帰ると夕食である。
 今日もまた小さな鮭が一切れ、そして味噌汁に納豆で米飯を掻き込む。
 このような純日本風の食事などしたくないのだが、妻に言わせればちょくちょく寄付をしてしまう私が悪いのだそうだ、それがいかに資本主義的な発想であるかを力説するが、妻はそっぽを向いて聞く耳を持たない、その上、日本に憧れる外国人を日本に招待するなどと言うふざけた番組を見ている始末、日本に憧れる外国人など居るはずがないではないか、不幸にも日本に生れついてしまった私は、毎日が苦しくて仕方がないと言うのに……アベが『美しい国』などとホザくようになってこの手の番組が増えているように思えてならない、そんな偏狭なナショナリズムなどこの世で最も醜いものの一つだと言うのに。

 夜、私がニュース○テーションを見ようとすると、妻がテレビにかじりついていてチャンネルを渡してくれない、サッカーワールドカップの最中なのだ。
 私にとって、『中』と『北』が出場していない大会など全く興味が持てない、その上、かろうじて出場していた『K』は予選リーグ敗退、アジアでは日本だけが決勝トーナメントに駒を進めたのだと言う、全く腹立たしいことだ、早く敗退して帰国すれば良いのだと思うが、アベがヤニ下がった顔で選手を讃えるシーンが頭に浮かぶと、いっそ帰ってこなければ良いのだとすら思う、大会が行われているのはロシアだから、『中』と『北』は国境を接している、いっそのことチームごと拉致を……。

 私の毎日はフラストレーションに満ち満ちている、それと言うのも全部アベのせいだ、ああ、それを思うとまたフラストレーションが……。
 やはりもうミサイルしかないのだろう……え? もし本当に飛んできたらお前の命もなくなるだって?
 そんな筈はない、何しろ私は9条を信奉しているのだ、「9条9条9条」とお題目のように唱え続けていれば決して被害は受けない、こんな当たり前のことがなぜわからないのか……それというのもアベが悪い、そうに決まっている。
 そう考えながら眠りに付いた……今夜は共産化革命の夢でも見られると良いのだが……。

作品名:左端から見れば全部右寄り 作家名:ST