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今よりも一つ上の高みへ……(第一部)

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「案外相手も『芯を外されたけどヒットになってラッキーだったな』とか思ってるのに、雅美ちゃんは『通用しないんじゃないか』って思ってるだけかも」
「そっかぁ……」
「あのね、普通に考えたら男子の試合に女子が出てる方がおかしいんだよ、それもプロって言う最高レベルでの話だもの、でも、雅美ちゃんにはナックルがあるでしょ? ナックルが打ちにくいのは男性も女性も同じだと思うよ、パワーが違うから高いバウンドの内野安打になったり、女子より遠くへ飛ばされたりするかもしれないけど、芯を外した結果だったらアンラッキーだったと思えば良いんじゃないかな、そしたら次はきっと空振り取れるよ、ナックルってキャッチャーミットに収まるまで変化し続けるから、バッターは捉えたと思っても凡打になったり空振りしたりするでしょ? そしたら次は色々考えちゃう、そうなったら雅美ちゃんのペースだよ」
「ですね……今は逆ですね、討ち取ったはずのボールをヒットにされてこっちが考えこんじゃってる、どこかで怖がってるからボールにも弱気が出ちゃってる」
「そうね」
「でも真っ芯で捉えられてるわけじゃないんだから、気にすることはない……」
「そういうこと」
「淑子さん、ありがとう……なんか吹っ切れそうな気がする」
「前に『女子プロ野球を背負ってる気持ちでやる』って言ってたよね、練習でそう思うのは良いことよ、でも試合では忘れて……そんなに重いもの背負って勝負できるわけないでしょ?」
「ですよねぇ」
「その意味も込めて、タピオカミルクティ、飲む?」
「どうして『その意味も込めて』なの?」
「あら、嫌い?」
「ううん、好きだけど」
「タピオカが飲み物の中に入ってるって、異物感があるでしょ?」
「う~ん、でも美味しいよね」
「そこよ、異物と言えば異物だけど、それもひっくるめたのがタピオカミルクティ、不確定要素もあるけど、それもひっくるめたのが野球、不確定要素なんて太いストローで思いっきり吸い込んじゃえば良いのよ」
「そっかぁ、細いストローで怖々飲んでたらタピオカは吸い込めませんよね、不確定要素ばっかり残っちゃう」
「そういうこと、はい、タピオカミルクティをどうぞ」
「あ、でも良いの? 淑子さんの分は?」
「大丈夫、ちゃんとふたつ買ってあるから」
「プリンも?」
「うん」
「プリンはもう一個の方も貰えません? 気が軽くなったらお腹すいちゃった」
「ふふふ、そのおおらかさが雅美ちゃんの可愛い所で、選手としての強みでもあるのよ、もちろんプリンは差し上げますことよ、存分に召し上がれ」