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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K ゼロ 「スピンオフ」(仮題)第7話まで公開

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第2話 ケイの日誌より



 惑星の表面は乾いた荒野が続いている。私は一人、ベース基地周辺の土地の造成を行っている。
 私はSS3200型バイオロイド。サーバントモデル(科学者型)のケイ。この星の開拓を任されている。それを指示した上官のエルは、別のミッションのため、16日前にこの星を離れてしまった。彼女が帰還するのは、早くても6年後。それまでにエネルギー資源を確保し、基地を拡大、ドーム内の家畜も増やさなければならない。
 この星の酸素濃度はやや低く、代わりに二酸化炭素が濃い。呼吸するには不向きだ。屋外ではマスクを常に着用し、ポンプで薄い酸素を取り込んで、加圧バルブで濃度を高めてからでないと呼吸できない。しかし、今日は、風が強すぎる。砂埃が舞い上がり、酸素マスクの外部フィルターが目詰まりを起こしやすい。地面に穴を掘る作業は、この辺で中止して、天候が回復してから再開することに。

 今日、屋外で作業していたのは、エルが育てていたリンゴの木を、環境の安定したドーム内から出して、外に植え替えようとしているからだ。それをこの星の環境に合うように、遺伝子レベルでの改良を加えてきた。その樹木はこの星の環境に初めて登場する生物となるから、エルの思い入れも大きい。きっとこの星の歴史上、象徴的な木になるだろう。必ず成功させねばならない。何よりエルの喜ぶ顔が見たいから。

 夜は孤独を感じる。私が感じる孤独は、感情ではない。ただ一人でいることに、自分の無力さを感じるぐらいだ。エルは、自分には感情があると言うが、それは我々アンドロイドにはあり得ないことだ。しかし彼女の思考の複雑さは、大変興味深い。確かに彼女を人間のように感じる時がある。都度、解析プログラムの自己修復を行ってきたが、タック(猫)と戯れる彼女のことを思い出すと、もう人間と認識してしまった方が楽でいいのかもしれない。
「ブヒブヒ・・・」
 子豚が私を呼んでいる。餌が欲しいのだ。しかし餌の時間ではない。でも少しだけやろう。きっと喜んで食べてくれる。
「早く成長しても、お前は食べられるだけなのだよ」
このドーム内には、豚の他に牛とヤギ、そして鶏もいる。とても賑やかだ。私は孤独な時、ここに来て、こんな仲間たちと会話をする。