凄惨! お化け屋敷
「なるほどなぁ……お前、天職なんじゃないか? 幽霊が」
「縁起でもない事言わないでくださいよ~」
「なんだか俺、自信なくなって来たよ」
「先輩、また大人数です、今度は男四人に女の子三人ですね」
「今度は俺の番だな?……今の参考にさせてもらうよ」
「先輩、がんばって!」
「………………(井戸から出るがしばらく黙って)ぎゃっ!(思い切りのけ反る)」
「先輩! 大丈夫ですか? ひでぇなぁ、いきなり後ろ廻し蹴りかよ」
「き……効いた……」
「でも先輩、女の子三人はそれぞれ男に抱き着いて怖がってましたよ」
「だよな……一人あぶれてた男が……」
「女の子の気を惹きたいから強い所見せようとしたんでしょうね」
「だな……参った……」
「先輩……目の上にこぶが出来てますよ、鼻血もまた出て来たし……」
「まあ、何とか大丈夫だ……ありゃ、今度は男五人のグループかよ、野郎ばっかりでお化け屋敷なんか入って来るなっての」
「先輩は休んでてください、俺が行きますから」
「ああ……頼む……油断するなよ」
「はい」
「うらめしや~~~」
「うわっ、びっくりした!」
「ホント、けっこう怖いもんだな」
「マジでチビるかと思ったよ」
「(五人を見送って)先輩、意外と怖がりましたね」
「そうだな……女の子がいないと格好つける必要ないからだな」
「そうみたいですね、男だから幽霊が怖くないってことはないですもんね」
「だな……怖いもんは怖いからな、オーソドックスに行ったのが却って良かったのかもな」
「勢い良く行こうと思ったんですけど、反射的にやられそうな気がして……」
「そうかもな、何かに襲われそうになった時、女は背中を向けてしゃがみこむけど、男は立ち向かおうとするって聞いたことがあるよ」
「そう言ってるうちに……また男ばっかりのグループですよ、今度は三人ですけど」
「今度は俺が行こう」
「大丈夫ですか? ちょっとガラが悪そうだけど」
「まあ、お客さんが来てるのに出ないわけにも行かないからな、ゆっくり出れば反撃はして来ないだろうよ」
「(髪を前に垂らし、井戸からズルズルと這い出すようにして)……うらめしや~」
「うわっ!」
「ひえっ!」
「ぎゃっ!」
「……え?……そんなに?」
「て、手前ぇ……脅かしやがって」
「あ、だって、ここはお化け屋敷……」
「目の周りに青痣なんぞつけやがって」
「これは手提げ袋で張られて……」
「血のりなんぞつけやがって」
「これは鼻血が……」
「こぶで片目がふさがってやがる」
「これも自前で……」
「俺らに恨みってなんだ! そりゃ俺らはヤクザもんだから恨みを買うような事ぁいくらもしてるがよ」
「いえ、め、滅相もない……これは定番の台詞でして、幽霊の」
「俺らはな、悪さはいくらもしてるが殺しだけはやった事ぁねぇんだ! お門違いなんだよ、さっさと成仏しやがれ」
バキッ! 「ぎゃっ!」
ボスッ! 「ぐへっ!」
ガツン! 「うげっ!」
「せ、先輩! 大丈夫ですか? 先輩! 先輩!」
「だ、大丈夫じゃないみたいだ……ぼ、坊さん呼んでくれ……」
「先輩! そんな! 気が早いですよ!」
「そんなことはない……見ろよ、とっくに死に装束は整ってる」
お後がよろしいようで……。