小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

凄惨! お化け屋敷

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
「お前か? 新入りって言うのは」
「はい、よろしくお願いします、先輩」
「こっちこそな……お化け屋敷のバイトは初めてか?」
「ええ、でも井戸の底がこんなに広いなんて知りませんでしたよ」
「まあ、ずっとしゃがんで待ってるわけにも行かないからな、どこでもちゃんと体を延ばせるスペースくらいはあるよ、二人入れるスペースがあるってのはここぐらいだけどな」
「へえ、ここって結構ホワイトなお化け屋敷なんですね……それにしても白装束に三角巾って、ずいぶん古典的な格好ですよね」
「まぁな、って言うか、今時俺らみたいなバイトがお化け役やるってお化け屋敷も珍しいだろ?」
「そうですね、時代は3D映像ですもんね」
「そうそう、機械仕掛けでさえもうすっかり時代遅れだからな、でもよ、人間がお化け役やるからこその怖さってものあると思わねぇ?」
「ああ、なんとなくわかります、入って来たお客さんに合わせられますもんね」
「そういうこと、機械や映像じゃそうは行かないもんな」
「でも、それって熟練が必要なんじゃ……」
「熟練って程のこともないよ、でもまあ確かにある程度場数を踏まないとわからない事もあるけどな、井戸から出るタイミングとか声の調子とか……す~っと出て行った方が良い場合もあるし、わっと行った方が良い場合もあるしな」
「それで教えてもらって来いって言われたんですね」
「そういうこと、俺も前の人に教わって憶えたんだよ、まず一丁やってみろよ」
「俺、怖がらせられますかね?」
「最初から上手くなんて行かないよ、でもこういう衣装付けて手や顔も青白く塗ってるし、とりあえずそれだけでも怖いっちゃ怖いから大丈夫だよ……ほらお客さんが来るぜ」
「ああ、その小さいモニター、一つ前の部屋の様子が写るんですね」
「そうなんだ、女の子の二人連れか……一人は怖がりだな、もう一人の腕にしがみついてらぁ、もう一人の方はかなり気が強そうだな、さあ、入って来るぜ、行けよ」

「うらめしや~~~」
「きゃ~~~~!」
「……何これ? こんな古典的な幽霊、今時珍しいわね、人がやってるのバレバレじゃん……くっだらない、次の部屋行こ」
(手を下に向けたまま二人連れを見送る)
「先輩……片っぽしか怖がらせられませんでした」
「そうだな……でも結構堂に入ってたぜ、お前痩せてるから幽霊っぽく見えるよ、台詞も上手かったぜ、怖がりの客ならあれで充分なんだけどな、気が強そうな方はあれじゃだめだな」
「また同じ様な二人連れですよ」
「ああ、今度は俺が行くからよく見とけよ」
「はい」
「行くぜ……」

「(勢い良く)うらめしやっ!」
「きゃ~~~~!」
「きゃっ! 何よ!」
 バシッ!
「いてててて……」
「手提げバッグで思い切りやられましたね、横殴りで」
「ああ……あの手提げ、弁当でも入ってたのか? えらく硬かったぜ、重そうだったし」
「目の周りが青痣になってますよ……でも、怖がってましたよね」
「わかるか? 怖かったから思わず手が出たんだよ」
「わかりますよ、小走りで出て行きましたし」
「まあ、こういうこともたまにはあるって憶えときな」
「はい……またお客さん……今度は女の子三人ですよ、ほとんど抱き合うみたいにしてますね」
「どうやら三人とも怖がりだな、あれなら簡単そうだろ?」
「そうですね、でも一工夫してみます」
「おう」

「……うらめしや~」(井戸に潜んだまま、三人が井戸の前を通り過ぎようとするタイミングを計って出る)
「「「きゃぁぁぁぁぁぁ~!」」」
「やるじゃないか、良いよ、今のタイミング、すげぇ勢いで逃げてったな」
「そうっすか?」
「ああ、上手い上手い、井戸から何か出るだろうと身構えてただろ? 何も出なくてほっとしかけたタイミングで出たからなぁ、腰を抜かしそうだったよ、もしかしたら一人くらいチビったかもな」
「へへへ……どうも……先輩、また同じような三人組ですよ」
「そうだな、今度は俺が出るよ、見てろよ……」

「うらめしや~~~」
「「「きゃ~~~~~」」」
 ドン!(突き飛ばされる)
「いてて……」
「先輩、大丈夫ですか?」
「ああ、ちょっと腰を打っちまったけど、まぁ大丈夫だ」
「三人固まって井戸見てましたね」
「ああ、何か出るって思うからな」
「一人、こわごわ覗き込もうとしたタイミングを見計らって出たんですね?」
「そう、出るかな、出るんじゃないかな、出ないと良いなって思ってるところでわっと行ったら怖いだろ?」
「ええ、あの子、先輩を突き飛ばす時ぎゅっと目を閉じてましたよ」
「そうだった? だったらまあ成功だな」
「勉強になります……先輩、今度はカップルですよ」
「ああ、カップルはな、女の子だけ怖がらせればいいんだよ」
「そうなんですか?」
「ああ、彼女が抱き着いてな、彼氏が『大丈夫だよ怖くないよ』かなんか言うためにお化け屋敷に入るんだからな」
「なるほど」
「ほら、来るぞ、行けよ」

「うらめしや~~~」
「きゃ~~~~」
「ははは、幽霊の格好した人間が出ただけだよ」
「でも怖かったのぉ~」
「怖くない怖くない、俺が付いてるって……」
「(カップルを見送って)先輩が言った通りですね、思いっきり抱き着いてましたよ」
「だろ? ああやって愛を深めていくんだな、その手助けをしてると思うとちょっと癪だけどな」
「あれ? 先輩、もしかして彼女いないんですか?」
「余計なお世話だよ、いたら日曜に幽霊なんかやってないよ、そう言うお前はどうなんだよ?」
「俺の彼女、美容師なんで火曜定休なんですよ」
「あ、そう……」
「休みの日が合わないってのも辛いもんですよ」
「知らないよ、そんなこと」
「先輩、またカップルです、今度の男はでかくてちょっと強そうだなぁ」
「そうだな……でもああいうのに限って怖がりだったりもするもんなんだよ」
「そうなんですか?」
「今度は俺が行くからな、男の方も怖がらせるからさ」
「はい」

「うらめしや~~~」
「きゃっ」
「あ、この野郎、驚かすんじゃねぇ!」
 バキッ!(右ストレートをモロに食らう)
「先輩! 先輩! 大丈夫ですか!?」
「大丈夫……って言いたいけど、結構効いたな」
「先輩、鼻血、鼻血、ティッシュ持ってますよ、どうぞ」
「ああ、サンキュー……ちょっと痛い目に遭ったけど怖がっただろ?」
「そうですね、ああいうこともあるんですね、俺も気を付けます」
「そうだな、俺としたことがちょっと油断しちまったよ」
「先輩、またお客さんです」
「今度はどんなお客さんなんだ?」
「大人数ですね、女の子が四人に男が三人、こういう時はどう行ったらいいんでしょうね」
「ちょっと……まだ鼻血が止まらねぇんだ」
「すみません、自分で考えます」
「ああ……入って来たみたいだな」
「ええ、行きます」

「………………(井戸から出るがしばらく黙って)ぎゃぁぁぁぁっ!」
「「「「「「「うわぁ!」」」」」」」
「すげえな……七人ともしゃがみこんじゃったぜ」
「台詞変えちゃったけどOKですかね?」
「全然問題ない、要は怖がらせればいいんだからさ、意表をついたんだな?」
「ええ『うらめしや~』って言うと思ってるでしょうから、思いっきり溜めてから一発かましてみました」
作品名:凄惨! お化け屋敷 作家名:ST