久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下
無理矢理に唇を奪われただけで、そんなに簡単に恋に落ちるものなのだろうかと、暖野は思った。お話の類は多く読んでいて、そういう表現も多く知ってはいても、それはあくまでも作られた物語でしかないと、暖野は思っていた。
恋に憧れてはいても、その辺りに関しては冷めた思いを抱いていた。そんなに都合よくいくわけがない、と。浮ついた甘い物語など、遠い異世界のことのように感じていた。
なのに――
異世界に来るに留まらず、そこで告白されるという事態に至っては、暖野の対処能力を遥かに超えてしまっていた。
「好き……か」
呟いてみる。
「好き、なのかな」
空には満天の星。銀河の帯が光の染みのようにたなびく空。
この世界にも、天の川はあるんだな――
織姫と彦星。
実際に見えている二つの星は、遥かな距離を隔てている。それらは既に存在していない星なのかも知れない。どちらか片方が消えてしまっても、相手の星がそのことを知るのはずっと後になってからなのだ。
あのお話は……
暖野は思った。
時空を隔てた恋物語なのだろうか、と。
作品名:久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下 作家名:泉絵師 遙夏