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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下

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エピローグ


 鐘が鳴り止むと同時に、夜空を染め上げていた光の競演の最後の余韻が薄れてゆく。
「終わっちゃったね」
 リーウが、手すりで辛うじて体を支えて蹲っているアルティアの肩に手を置いた。
 アルティアは振り向きもせず、答えもしなかった。その肩が小刻みに震えている。
 構内の照明が戻る。
「アルティ? あなた――」
「言わないで!」
 思いもよらぬ強い口調に、リーウは一歩退いた。だが、すぐに気を取り直してアルティアの傍に寄る。
 無理に振り向かせるつもりはなかった。しかし、アルティアの方からやおらリーウの方に抱きついて来た。
「アルティ……」
 アルティアが泣き出す。
「私……、私……」
「もう、いいよ」
 声を押し殺して、アルティアは痙攣してでもいるかのように咽び泣いている。リーウはその背にそっと腕を回し、抱きしめた。
「泣いていいよ。我慢しなくたって、いいからさ」
 胸に押し当てられた口から、嗚咽が漏れてくる。背に回された腕に力がこもり、悲しみの熱い呻きがリーウにも肌を通して伝わってくる。
「私だって……」
 リーウが空を仰ぐ。「私だって、泣きたい」
 まるで小さな子をあやすかのように、リーウはアルティアの頭に手を置く。
「でもね」
 自分に言い聞かせているかのように、リーウは言った。「それは、今じゃない気がするから」
 空には満天の星。いつもと変わらない特殊統合科学院の夜。ただ、ノンノという一人の女学生がいなくなっただけ。これまでにも多くの生徒がここで学び、そして去って行った。状況こそ違え、ノンノもそのうちの一人でしかないのだろう。
 ノンノがいなくとも、ここに残った者には明日がある。そして明後日も。
「ルーニー」
 声には出さず、リーウは言った。「あんたとノンノは、同じ運命を背負ってるの?」
 だったら――
 あんた達は、また会えるよね――
 ノンノを、よろしく――
 アルティアが声を上げて泣き出す。
 背後のさざめきをよそに、リーウはそっと、目尻に浮いた涙を拭った。