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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~下

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「お姉ちゃんたちはね、もっと遠くからあの町に来たのよ」
「ふうん」
「あなたは、どこから来たの?」
 暖野は訊いた。
「知らない」
「知らないって、ずっとこの船に乗ってたわけじゃないでしょ?」
「ずっと乗ってるんだよ」
 どういう意味だろうと、暖野は思った。だが、それはひとまず脇に置いておく。
「お父さんとお母さんは?」
 その問いに、男の子はしばらく考える様子を見せた。
 そして言った。
「知らない」
「どこに行ったか分からないの?」
「おとうさんとおかあさん?」
「そうよ」
「それは、何なの?」
「え……?」
 どうやら行方がどうとかではなく、その存在自体を知らないらしいことに衝撃を受けた。
 まさか――
 みなし子?
 聞いてはいけないことを訊いてしまったのだろうかと、暖野は思った。
「この船に、他にも誰か乗ってる?」
 遠回しな質問にはなるが、そういう言い方しか出来ない。保護者か誰かがいるかも知れないと考えたからだ。
 だが、男の子は首を振った。
「僕、ひとりだよ」
 元々無人だと思っていただけに子供が乗っていることに驚いたが、今度は別の意味で驚かされてしまった。
 この子は、ずっと一人きりだったのか、と。
 暖野は言葉を失くして、男の子を見つめた。
「お姉ちゃん、さっきはごめんなさい」
「うん?」
「双眼鏡」
「ああ、あれね。私こそごめんなさい。あなたのだって知らなかったから」
「取られたと思って。これがなかったら、なんにもすることがなくなるし」
「私もね、これまで誰もいなかったから、この船もそうだって思ってしまったの」
「あの、それと……」
 男の子がもじもじする。「飴玉、ありがとう」
「美味しかった?」
「うん。初めて食べた味だったけど、美味しかったよ」
「よかった」
 暖野は微笑んだ。「あ、そうそう」
 ポケットに手を突っ込む。そこには二つのビー玉があった。
「これ、あなたのでしょ?」
「あげたから、いいよ」
 掌のビー玉を見て、男の子が言う。
「もらったのは一個だけよ。もう一個は落としたでしょ? 最初に私たちが来た時に」
「うん。でも、いい。2個ともあげる」
「そうなの? じゃあ、もらっていいの?」
 男の子ははっきりと頷いた。
 べつに欲しいわけではないが、その気持ちだけは嬉しかった。
「お姉ちゃん、さっき一緒にいた人は、おばちゃんの夫婦なの?」
 また、おばちゃんに戻っている。しかも思い切り勘違いしている上に、言葉の使い方がおかしい。どこから突っ込もうかと、暖野は悩む。
「まず、私はお姉ちゃんね」
 一番大事なことを最初に押さえる。「それと、私たちは夫婦じゃないわよ」
 お父さんとお母さんの意味を知らないのに、どうして夫婦は知っているのか、それは聞いても答えられないだろう。子どもは時に、思いがけず突飛なことを口にするものだ。
「ふうん。じゃあ、何?」
 これもまた返答に困る。
 友達ではないし、連れと言えばそうなのだが子どもには難しいだろう。そう、強いて言うなれば――
「ボディ・ガードよ」
「ボディ・ガード?」
 どうもこれも意味が分からないらしい。
「怖いこととか危ないこととかあった時に、守ってくれる人よ」
「そうなんだ。じゃあ、強いんだね」
「うん、そうよ」
 強いのかどうかは知らないが、とりあえずそういうことにしておいた。
「守らなきゃいけないのに、一緒にいてくれないの?」
「大丈夫よ。ここにはあなたしかいないんだし」
 色々と鋭い質問をして来る彼に戸惑いながらも、暖野は微笑んで答えた。
「僕も、すごく強いんだよ。ほら、見てて」
 男の子は駆け出すと、横の階段を数段昇った。
 そして、下から三段目から飛び降りて見せる。
「ほんとだ、すごい!」
「でしょ?」
 暖野が大袈裟に褒めると、彼は満面の笑みを浮かべた。
「ねえ、あなたは名前は何て言うの?」
「僕の?」
「うん。私はノンノ」
「僕はね――」
 彼は少し思い出すような仕草をしてから口を開いた。「トイチャット」