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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上

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「それだけじゃなくて、わざわざあんな大きなのを回すなんて、非効率なんじゃないの?」
「風車を回すと風が起こる。ただ力だけに頼るんじゃなくて、自然も利用するの」
「なるほど。それじゃ、マナと自然の力の組み合わせで、ほとんど無限のエネルギーが生み出せるのね」
「無限かどうかは分からないけどね」
 リーウが言う。「あの大風車の向こうに、この世界の町があるの」
「遠いのね。リーウは行ったことあるの?」
「一度だけね。校外学習で」
 校外学習。遠足か――
 違う所も多いが、基本は暖野の知っている学校と同じなようだ。
「ねえ」
 暖野は訊いてみる。「この学校には、学園祭とかあるの?」
 そう、遠足があるのなら、学園祭もあるだろうと暖野は思った。
「学園祭? 何それ」
「えーと……」
 自分で言い出しておいて、説明に困る。
「学校でお祭やるの? ズンドコ祭りとか?」
 いや、何なのよ、それ――
「お祭っていうか、クラスとかクラブごとで出し物とか披露したりするの」
「ああ!」
 リーウが手を叩く。「発表会か!」
 暖野は頭がくらくらした。
 発表会。何て直截的なネーミング。
 まあ、学園祭とか文化祭などと言ったところで、文化的なことなどほとんどしていないのだから、発表会が正しい言い方なのだろう。
 でも、気になる――
「その、ズンドコ祭りって何?」
「ノンノ、知らないの?」
 さも意外そうにリーウが言う。
「知るわけないじゃない」
「夜にね。火を囲みながらみんなで踊るのよ」
 楽しそうにリーウが話す。
 だが、暖野が想像したのは、原始人の仮想をした生徒や教師たちが滑稽な振り付けで踊り狂う様だった。それはそれで楽しいのかも知れないが、絶対に違うだろう。
 それは多分――
 キャンプ・ファイヤーだ。
「踊るの? 輪になって?」
 暖野は訊く。
「なんだ、知ってるんじゃない。ズンドコ祭りはカップルになれる絶好のチャンスだし、男子も女子も楽しみにしてるんだ」
 やっぱり、キャンプ・ファイヤーで間違いない。そして、フォークダンス。
 しかし、その名前からはロマンスの欠片も感じられない。
 変な想像をして勝手にニヤついてしまうのを抑えて、暖野は話題を戻す。
「で、その発表会。あるのね?」
「うん。今年のは終わったけど」
「そうなんだ、残念」
 言いながら、本当に残念なのかと思う。現実世界では、暖野は劇の実行委員で頭を悩ませていたのだから。
「ここの発表会って、参加できるだけでも特典だしね」
「特典?」
「うん。ここの学生って、在学期間決まってないから、発表会を知らずに卒業するのも多いんだって」
「ふうん。リーウは参加できたの?」
「出来たけどさあ」
 二人は学校裏の方に向かって歩いていた。
 少し離れたところに、見たことのあるドームが見える。
「あれは――」
「星鏡台(せいきょうだい)よ。宇宙を観測するの。天文学で使う」
 天文学って言葉はあるのに、天文台とは言わないのね――
 確かに、遠くを見るものを望遠鏡とか双眼鏡という。それと同じかと暖野は思った。
 天体望遠鏡を端的に表現すれば、それが一番妥当な名称だろう。
「あ、見えてきた」
 リーウが、林の向こうに見えている屋根を指さした。「あれが、うちの寮よ」
 随分遠回りしたが、実際には校舎からそう遠くはないようだ。
 庭も林もそれなりに手入れが行き届いていて、校内というよりはどこかの宮殿の敷地内のようだ。
 二人は寮へ向かって歩いて行った。