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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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久遠の時空(とき)をかさねて ~Quonฯ Eterno~上

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 リーウはそのホットドッグを、暖野は前回食べて気に入ったプレッツェルサンドをオーダーした。オープンテラスでパンを齧りながらリーウが言う。
「何よ、せっかくのスペシャル・メニューなのに」
「私、あんまり辛いのは苦手なの」
 暖野は言った。
「ここのスパイシーって、そんなに辛くないけど」
「うん。でもちょっと」
 暖野は以前スパイシーとはスパイスが効いたものと思っていたのだが、通常は辛いという意味だと知ってから敬遠している。
 だって……
 舌が痛いんだもん――
「まあ、好みはそれぞれだしね」
 リーウが言う。「ノンノは魚ペーストとオーロラ・ソースが好きみたいだし」
「うん。この組み合わせは大好き。ただ、他のソースはベジタリアン向けか肉がっつり向けかだし。組み合わせに迷っちゃうかな」
「確かに」
 リーウが笑う。
「ノンノって、アビリティの割には、あくまでも無難を目指すのよね」
「それって、どういう意味よ」
 パンにかぶりつきながら、暖野が言う。
「そのままの意味よ」
「まあ、どうせ私は当り障りのない普通の人ですから」
「そんなに拗ねないの」
 リーウが、暖野の肩を叩く。「もっと自分に自信を持ちなよ。あんた、自分を卑下し過ぎよ。私もびっくりしたけど、フーマが推すなんてホントあり得ない。いつもなら先生がアルティとフーマあたりを指名して手本を示すだけだったんだから」
「そ……そうなの?」
「私が嘘言うと思う?」
 暖野は首を振った。
「私ね、ノンノとカクラが同じ班になった時、絶対フーマがそれをやるって思ってた」
「アルティアさんとカクラ君は優等生だもんね」
「でも、フーマはノンノにやれって言った」
「うん、確かにそう」
「私ね、見てしまったの」
 リーウが真剣な眼差しで言う。「彼、あんたのこと好きなのよ」
 え……
 まさか――
「見たって……何を?」
「あいつ、あんまり感情を出さないのよね」
「そうみたいね」
「でも、ノンノが浮かび始めた時、あいつ笑ってた」
「そりゃ、ちょっと移動するだけなのに飛び過ぎたから――」
「そんなんじゃなくて」
 リーウが遮る。「あれは、憧れの目よ」
「……いや、ちょっと……」
 暖野は視線を泳がせる。「やめてよ。そんな憶測。次にカクラ君に会った時、変に意識しちゃうじゃない」
「ノンノもあながち、まんざらでもないんじゃないの?」
「違うってば!」
 暖野はムキになって殴るふりをした。
 リーウが声をあげて笑う。
「冗談よ。なに本気にしてんのよ」
「もう!」
 暖野は、リーウを睨みつけた。