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大地は雨をうけとめる 第5章 幽霊屋敷

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「夜明け前にはインディリムが来ます」
 インディリムは従僕見習い、ルトイクスは今年見習いから上がったばかりだ。どうやら一番下の二人が、寝ずの番を言いつかったらしい。
「夜中の仕事は辛いだろうけど、頼んだよ」
 かしこまりました、というルトイクスの返事を背に、彼女は部屋へ戻る。
 生意気でかしましい小童が帰った後、屋敷の中は妙に静かに感じた。毛布をかぶっても、眠れそうになかった。
 目を覚ますだろうか。もし覚まさなかったら……。
 血の気がひいて行くようだ。このところ、距離を置くようにしてきたとはいえ、アニサードが大切な存在だということは変わっていない。
 人ならぬ気配に気づいて、そちらを見ればカズックだった。のんきな顔をして、後ろ足で耳の後ろをかいていた。
「カズック……アニスは今、どこにいる?」
「ユフェリだ。行っても会えないぞ」
 ルシャデールがすぐにそこを訪れようとしたのを察して、彼はつけ加えた。
「どうして?」
「タクスムの隠居が言ってただろが。そうすることが必要だからだ。忘れたのか? 『ものごとすべて故なきものはなし。人の目に見えずとも、常に義あり』ってな」
「そのくらいわかっている」
「どうかな?」カズックは首をかしげ、片耳を上げる。
「このままだと死んでしまう!」
「人は死なない。四年前、おまえはあの坊やにそう言ったろう。そして、ユフェリに生きる家族と会わせてやったじゃないか。死ってのは何だ? 無になることではないぞ」
「だけど……」
 自分の中の矛盾を突き付けられて、ルシャデールは黙る。
「おまえ、昔の方がよくわかっていたぞ。年頃になって、色ボケしたか」
 最後の一言にかっとなって、水差しを投げつけたが、彼はすでに姿を消していた。