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和ごよみ短編集

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《其の17》『うける』



 

「はんげしょうって言葉知ってますか?

「はげでしょうってなんだ!失礼な、産毛が生えとるわい

「いや、違いますがな。はんげしょうですって

「あら、ワタシ急いでいたんで 化粧が半分でぇ

「いやいや それでもないって

「じゃあなんですかぁ?

「いいですかぁ?半分の半、季節の夏、生まれるの生 で半夏生と書きます

「もわっと暑いんですな。半人前の夏ってことでしょ

「いやぁ… それとも違うし、生(なま)が入ってないでしょ

「っじゃあ、半人前の夏のくせに生意気なヤツってことでどうよ!

「どうよ!って云われても

「じゃあなんですかぁ?

「説明するとね、半夏生っていうのはね…って寝てるやないかい!

「すまん、昨夜は寝られんで 起きていたんでね

「ま、まあ寝てないなら 起きてますよね

「いや、横にはなっとった

「どっちやね

「だから そういうことでしょ?

「どういうこと?

「生ビールの生、丁半の半、キンチョウの夏 

「生ビールの生? 丁半の半? キンチョウの夏? 生半夏 どう読みますの?

「なまはんか

「そんな いいかげんなこと、ありかいな

「生中飲んでいて 途中で用事を思い出して 半分残して走り出したら ぅぅう…道端でぇ

「それは中途半端ってか! もうええって


「さて、休憩はおしまい。続き始めようか」
田植えの最盛期。段々の田んぼに植えられた小さな稲が風に揺れる。
汗を拭い、緑の景色を眺めての一服。
真っ白なにぎりめしと水筒のお茶とくだらない掛け合い漫才もどき。
観客は、春に生まれた蛙(かわず)の兄弟。(あぁ〜〜面白くない)(笑ってあげようよ)

げこげこ けろろん……




     ― 了 ―



作品名:和ごよみ短編集 作家名:甜茶