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熱いぜ! ライダー!

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「マグマ男は全く移動していない、おそらく火山弾や火砕流は奴が生み出しているわけじゃない、地下深くで繋がっているんだろう」
「つまり、奴はあそこから動けないってことだな?」
「確かにそうだ、だがそれだけじゃない」
「なんだ?」
「地下と繋がっているってことは、奴のマグマは無尽蔵だってことさ」
「なるほどな、確かにそうだ、だが動けないと言うことはこっちの攻撃を避けられないと言うことでもあるさ」
 マッスルは体の倍ほどもある岩を高々と持ち上げ、マグマ男に投げつけた。
「なるほど、その手が……」
「いや、待て!」
 
 マッスルが投げつけた岩はマグマ男の脳天に命中したが、そのために却って火口が大きく開いてしまった。
「わはははは、墓穴を掘ったな、マグマ男! とっておきの噴火攻撃だ!」
 ドーン! ドーン! ドーン!
 マグマ男は大噴火を繰り返してライダーたちを狙う。
 ジャンプ力に優れたライダーとロープアームを持つライダーマンはその攻撃をかわして跳びまわることができるが、マッスルは次第に追い詰められてしまう。
 それを見たマグマ男はマッスルに照準を定めた。

「あなた! 危ない!」
 がけを背にした小さな足場に立つマッスル! もう彼が跳び移れる範囲に足場はなく、地面は既に真っ赤に焼けたマグマに覆われている!
 その時だ。
「調子に乗ってんじゃないわよ~!」
 およそ似つかわしくない悪態と共に晴子が冷気を吐く。
「晴子ちゃん! お願い! 頑張って!」
 晴子の冷気とマグマはしばし空中でせめぎ合っていたが、マグマの熱は急激に失われ、冷えた溶岩石となって固まって行った。
「晴子ちゃん、今のって……」
「えへへ……できちゃった」
 晴子はペロッと舌を出したが、気を失うように倒れ込んで危うく志のぶに抱きかかえられた。
 身寄りのない晴子にとってライダーチームは家族も同然、その大ピンチに直面して晴子の潜在能力が解放されたのだ。
「助かった! 晴子ちゃん、恩に着るぜ! やい、マグマ男! これでも食らえ!」
 九死に一生を得たマッスルは固まった溶岩石を折り取ると、再びマグマ男に投げつける。
 そして狙い違わずそれは火口に突き刺さった。
「ぐあっ!」
「ええい! 怯むな! マグマ男! そんな岩など噴き飛ばしてしまえ!」
「ぐぅぅぅぅぅぅ……」
 マグマ男がいきむ、しかし溶岩石はマグマ男の想像以上に深く突き刺さっていた。
「あ、マグマ男! よせ! 危険だ!」
 マグマ男の円錐形の体が徐々に膨らんで来たのを見て、地獄大使はうろたえた。
「それ以上いきむと爆発するぞ」
「うぐぅぅぅぅぅ」
 マグマ男はもういきんでいるわけではなかった、地下からどんどん供給されるマグマは彼がコントロールできる量を超えていたのだ。
「い、いかん! お前たち! 退却だ!」
 地獄大使が戦闘員を引き連れて一目散に逃げだした、その直後……。

 ドカーン!

 血を揺るがすような大音響と共に、マグマ男は跡形もなく飛び散った……。

ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「やっぱり無理みたい……」
 一度はマグマを止めるほどの冷気を吐くことができた晴子だが、アジトに戻ってトライしてみるとやはり戦闘員を怯ます程度の冷気しか出せない。
「お雪さん……」
 晴子が自分並みの冷気を吐いたと聞いたお雪は、晴子のコーチとしてアジトにいた。
 酷暑の東京とあって、お雪が纏う冷気とたっぷり湿気を含んだ熱気のせめぎあいは、お雪の周囲を水蒸気だらけにしていて、その姿がほとんど見えないほどだ。
「イメージの問題だと思ったけど、そうじゃなかったみたいね、あなたはマッスルさんのピンチに直面した、その時『気』が爆発的に噴出したのね……すごく疲れたでしょう?」
「うん、気を失って倒れこんじゃった」
「良く火事場のバカ力って言うでしょ? 同じことがあなたにも起こったんだと思う、いっぺんに『気』を全部使っちゃったから抜け殻みたいになっちゃんだわ」
「あの力はいつでも使えるわけじゃないってこと?」
「そうね、でも大ピンチに直面すればまた使えるんじゃない?」
「だといいけど……」
「きっとそうよ、でも一回限りの最後の手段だってことは憶えておかないとね、あなたの力を全部解放しちゃうんだから、その直後はいつもの陰陽道も使えなくなると思う」
「確かにそうかも……」 
「あ~あ、それにしてもお札で封じられるなんて情けなかったわね……やっぱりあたしたちは人間界に出て来ちゃいけないんだわ」
「えっ? もう出てこないの? それってもう会えないってこと?」
「ううん、おおっぴらに出て来ちゃ拙いって思うだけ、あなたに呼ばれればいつでも駆け付けるわよ、ショッカーなんかに日本を征服されるわけには行かないもの、ここはあたしたちの国でもあるんだからね」
 にっこり笑ったお雪は空中に溶けて行くかのように消えた、山に帰ったのだ。
 ちょっとしょんぼりしてしまった晴子だが、その肩をポンと叩く者がいた。
「晴子ちゃん、今回は本当に助かったよ、今度は俺たちが君を守るからな」
 振り返ると仮面ライダー・マッスルこと剛の気持ちの良い笑顔、
 その後ろには志のぶ、隼人、丈二、そしておやっさんの笑顔も並んでいる。
「うん」
 晴子はにっこりと微笑んだ。
(そう、あたしにはこの人たちがいる、家族同様の大事な人たち……守り、守られながら、共に正義のためにショッカーと戦う仲間たちが……)
 数年前、ショッカーと手を組んだ陰陽師・アシャード・ドゥーマンとの戦いに敗れた父、父と一緒に命を落とした母……目の前で大事な人を奪われた時の悔しさ、悲しさは今でも鮮明に憶えている。
 二度と自分と同じ思いをする人があってはならない、だからこの大事な人たちと一緒に戦う、ショッカーを殲滅するその日まで……。
 そう心に誓う晴子、いや、陰陽師・アベノセイコであった……。

作品名:熱いぜ! ライダー! 作家名:ST