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熱いぜ! ライダー!

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「きゃぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁ!」
 都内のとある遊園地、今日もお化け屋敷は大盛況だ。
 それもそのはず、お化け屋敷のお化けたちは全て本物なのだ。
 真っ暗な中に狐火が浮かび、唐傘お化けやろくろ首が暗闇からにゅっと現れる。
 更に進むとぬりかべにぶち当たり、井戸からは皿を数える声が聞こえて来る。
 やせ衰えた女が水飴を乞い、壁にかけられた小袖からはにゅっと手が伸びて来る。
 戸板がバンと裏返るとお岩さんが張り付いている、ようやく明るい所に出て来たと思えば提灯が笑い出す……。
 へたりこんで動けなくなる女性もいるほどの怖さだ。
 
 だが、その中でも一番人気は雪女だ。
 そもそもその部屋に入っただけでぞっとするほど涼しい、部屋の片隅には青色LEDに照らし出された雪女がぼうっと浮かび上がり、その美しい顔を上げると冷気を吹きかけて来る、その冷たさと言ったら……。

『怖いもの選手権』と言うイベントが毎年定期的に開催されるようになり、お化けや妖怪たちも時折現代社会に出てくるようになった。
 となるとお化けも人の子……かどうかはわからないが……物欲だって生まれて来る、物欲を満足させたいと思えば金が要る、金を稼ぐには働かないといけない。
 そのための夏季限定アルバイトがこのお化け屋敷のキャストなのだ。

 雪女は当然お雪本人だが、来場者を凍らすわけにも行かないのでお雪としては相当に手加減した冷気しか吐けない、お雪が吐く冷気のせいで普通の人間にはぞくっとするほど涼しい部屋だがお雪にとってはまだ暑い、お雪が纏う冷気と、湿った空気がせめぎ合ってお雪の周りには常に白い水蒸気が立ち込める、それがお雪を一層幻想的に、かつ美しく見せ、男女を問わずお雪は大人気なのだ。

 お雪が東京に滞在しているとあって、お雪の勤務時間が終われば晴子は毎日のようにお雪の元に通っている。
 お雪が吐く冷気は一種の『気』だ、だとすれば気を操る陰陽道でも冷気を吐くことが可能になるのではないかと考えたのだ。
「う~ん、やっぱり上手く行かないなぁ」
「でもちょっとは出せるようになったじゃない」
「これくらいじゃ武器としては使えないわ」
「まあ、一朝一夕で出来るもんじゃないわよ、簡単に出来たらあたしの存在価値はどこにあるの? ってカンジだもん」
「なんかコツみたいなものはないのかしら」
「まあ、強いて言えばイメージね、絶対零度のイメージ」
「絶対零度って言われてもねぇ……」
 お雪に『イメージが大事』と言われ、おやっさんのツテを頼って冷凍倉庫体験させてもらったりはしている、しかし冷凍倉庫と言えどもせいぜいマイナス50度、絶対零度のマイナス271度には遠く及ばない。
 とは言っても液体窒素に浸かるわけにも行かず、晴子が抱けるイメージはマイナス50度が限界なのだ。
「まあ、マイナス50度でも戦闘員を怯ませるくらいはできるんじゃない?」
「あたしにはそれくらいが限界なのかなぁ……」
 晴子はちょっと悔しそうにつぶやいた。

 あくる日……。
「ショッカーが現れた! みんな、頼むぞ」
 おやっさんが警察の連絡を受けて檄を飛ばす。
「どんな怪人なんです?」
「火山のような、と言っていたが……詳細はわからん」
「火山か……この暑いのにまた暑苦しい怪人だな……だがそうも言っていられない、みんな、行こう!」
 ライダーチームはそれぞれのマシンにまたがる、晴子もON-3号のタンデムシートにまたがり、志のぶの腰にしっかりと腕を回した。

ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「わはははは……ライダーども、飛んで火に入る夏の虫とはよく言ったものだ、バッタの怪人だけにな」
「地獄大使! その冗談はサムいぞ」
「ははは、毎日毎日暑いからな、この場で死んで行くお前たちにせめてものサービスだ、やれ! マグマ男!」
 現れたのは全身が黒い岩に覆われたような怪人、体全体がまるで火山のように円錐形でところどころ見えるひび割れは内部のマグマで真っ赤に見える、そして天辺からは黒煙を吹き出している。
「なるほど、火山みたいな怪人と言う情報はかなり正確だったようだな」
「しかし、あれも改造人間なのか? 火山のDNAなんて聞いたこともないぜ」
「なんだか出て来る怪人が段々現実離れして来たな」
「作者のネタ切れじゃない?」
 志のぶの鋭い指摘に三人ライダーがうんうんと頷く……だが作者としてはそれで怯むわけにも行かない! ご都合主義は今に始まったことではないし、後にも退けないのだ。

「わははは、笑っていられるのも今の内だけだ、やってしまえ! マグマ男!」
 ボン、ボン、ボン。
 マグマ男は頭の天辺から火山弾を連続して打ち出して来る。
「なんの! うわっ熱っちぃ!」
 火山弾をパンチで打ち返そうとしたマッスルが慌てて手を振る。
「大丈夫か!? マッスル!」
「ああ、強化スーツのおかげで火傷までは行かないよ、だが受け止めるわけには行かないな、打ち返しただけでこの熱さだ……ライダーマン、ウォーターガンは?」
「あの程度の水では文字通り焼け石に水だな、私のフックアームなら打ち返すくらいはできるが……」
「どうだ! マグマ男の実力は! だがまだまだこんなものではないぞ、マグマ男、火砕流攻撃だ!」
 ボーン!
 大きな音と共に高熱の黒煙が噴出し、ものすごい勢いでライダーたちに迫る!
「晴子ちゃん、ぬりかべを呼べる!?」
 三人のピンチに志のぶが叫ぶ
「それが……」

ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「イーッ!」
「イーッ!」
「きゃぁぁぁぁっ!」
 その頃、かの遊園地では、いかにも暑苦しい全身黒タイツの戦闘員たちが乱入し、お化け屋敷を取り囲んでいた、お化けたちを建物から出られなくするためにお化け屋敷にお札をベタベタと貼り付けて結界を張っていたのだ。
 ぬりかべはマグマ男の攻撃を防ぐ能力があり、お雪はマグマ男の天敵とも言える。
 このお化け屋敷の評判を聞きつけたショッカーは密かに私服姿の戦闘員を調査にもぐりこませ、お化けたちが本物であると確信して先手を打って来たのだ。

ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!

「マッスル、私につかまれ! ライダー・ジャンプ!」
「ロープアーム!」
 ライダーたちは高台に跳び移ってなんとか火砕流攻撃を避けた。
「ひょう、危ねぇ、ライダー、感謝するぜ」
「当然だよ、仲間だからな……しかし、奴への攻撃手段が見つからないな」
「……」
 マッスルが突然黙り込む、こんな時は大抵……。
「マッスル、愛のテレパシー連絡か?」
「愛の、は余計だ、照れるじゃねぇか……しかし悪い知らせだ、お雪さんとぬりかべはお化け屋敷に封じ込められてしまっているそうだ」
「うむ……確かにそれは悪い知らせだが、いつもいつも彼らに頼ってばかりもいられないだろう? マグマ男は俺たちで倒さねば……ライダーマン、なにか方策はないか?」
「難しいな、ただ一つ分かったことはある」
「なんだ?」
作品名:熱いぜ! ライダー! 作家名:ST