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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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本の妖精リセラ

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 本の光は少しずつ強くなってゆく。それと同時に、店主の胸のあたりから同じ色の光が広がりはじめていた。
 リセラはそれに見入った。
 本と店主の両方から光がひろがり、ランプのあかりがうすれてゆく。
 こんなことって、あるのだろうかと、リセラはおどろきで声もなくしてしまう。
 店主が本を手に取る。
 部屋中にひろがった光はリセラをからめ取り、身動きさえ出来なくなってしまう。
 この本は、店主のものだったのだと、リセラは思った。こんなにも強い結びつきは、リセラもはじめて見た。このことに気がつかなかったなんて、妖精失格だとリセラははずかしく思った。
 光に包まれたまま、店主が表紙をめくる。表側ではなく、裏表紙を。
 店主の目が光っている。それは、なみだだった。
 そして、つぎの空白のページの裏に書かれた文字。そこに浮かび上がったもの。手書きされたきれいな字。
 名前。
 そうか。そうだったんだ……
 リセラは、店主の名前を呼んだ。
 もうずっとむかしのことで忘れてしまっていた。いや、そうではない。リセラとして生まれてからずっと、知らなかったこと。
 店主が、本に書かれたひとの名前をつぶやく。
 光の中に溶けてゆきながら、リセラはそっと返事をした。

――わたしは本の妖精リセラ。本と人を結び合わせるのが仕事。この店が出来てから、ずっとここにいた。あの本も、ずっとここにあった。わたしは本の妖精。

 彼の、たったひとりの……
作品名:本の妖精リセラ 作家名:泉絵師 遙夏