オヤジ達の白球 61話~65話
途中から雨音を聞いたような記憶がある。
風も強まったようだ。(荒れた天候になって来たようだなぁ・・・)
そんな感想をぼんやり抱きながら、そのまま眠りの中へ落ちていった
記憶がある。
(雨がふると積もった雪が水気を含む。
そこへつめたい強風が吹きつければ、氷のかたまりが出来上がる。
そのかたまりが、2階の屋根から滑り落ちてくる。
そいつが雪の地面に、クレーターのような穴を開けるんだ)
眠っているあいだに雪が重みを増していたんだ・・・と祐介が、ぼんやりした頭で考える。
水をふくんだ雪は想像を超える重量になる。
しかも雨は一時的なもので、いまはまた雪に変わり、それはいまも
降り続いている。
(あ・・・)
祐介が急に覚醒する。
(屋根から落ちる氷のかたまり・・・まずい!)
車は玄関の直前に停めてある。
停めた車の真上に、2階からひさしが突き出ている。
愛車へ氷のかたまりが落ちる可能性がある。直撃したらたいへんな事になる。
祐介の予感が的中した。
毛布をはおり、表へ飛びだした祐介がみたものは、変わり果てた愛車のボンネットだった。
屋根に大量の雪が降り積もっている。
ゆうに60㌢はあるだろう。
しかし。ボンネットの上に雪は無い。
そのかわり。2ヵ所に、ハンマーで殴った様なへこみが出来ている。
2階のひさしから落ちてきた氷のかたまりが、ボンネットを
直撃したのだろう。
凹んだボンネットの様子を見て、祐介がおもわず苦笑をうかべる。
(雪が凶器になる事実を、おれは、産まれてはじめてこの目でみた・・・)
祐介が毛布にくるんだ身体を、おもわずぶるりと震わせる。
(66)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 61話~65話 作家名:落合順平