【詩集】 蒼い風
白桔梗
瑠璃色の中にあり
ただひとり真白に凛と咲く白桔梗
際立つことを恐れつつ
それでもなお我が身を晒す白桔梗
ただひとり違う身の
憂いを唄う白桔梗
夜の野に咲く寂しさを
朝露映えぬ虚しさを
遠くの虫の音に託して歌う
ただ独り身の白桔梗
その歌声は野に満ちて
夜から朝へと駆け巡り
白昼に潜む穏やかさの中に
声を潜めて訴える
私は色を失った
届かぬ想いの哀しさに
全ての色を捧げても
まだ足りないのかと嘆きつつ
私はただの白桔梗
色を失くした白桔梗
朝早くに目覚めたら
ほんのひとときだけ私の色が
世界を染めるのを見てください
私があずけた瑠璃色は
わずかな間の明け方に
陽の昇る前の静けさに
明星の消えるよりより早く
鮮やかな薔薇色にのまれてしまう