紅茶と庭のお話
だって、私は都会の真ん中で生まれ育って、そんな造成地なんてなかったから。
でもね、その場所は確かにあるの。
それはね、昔遊びに行った親戚の家の近く。
当時はまだ造成地で、やっぱり家が少なかった。
事情があって、その親戚の家の近くに引っ越した。
あの時のことなんて完全に忘れてたから、その場所がすぐ近くにあることに気づきもしなかった。
でも、最後に見た夢のあとにね、思い出した。
確かにそこだったって。
実際に行ってみたんだよ。
記憶の通りに坂道があって、その突き当りを左。
あの時はなかったけど、上に登る道があって。
でもね……
あの家はなかった。
ただ、建っていないんじゃなく、最初からなかった。
だって――
そこにあったのは、沼だったから。