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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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欠けた月の暗闇の中

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バスルームは既に宮本には、加奈の身体のように感じた。湯気の暖かな感触、それは加奈の肌のぬくもりのように感じたのだ。加奈はシャワーを頭から浴びたのだろう、ロングの髪が背中の半分ほどまで垂れていた。宮本はバスタブから湯を汲み、体にかけた。欲しいものを見つけた子供のように、加奈の背後から抱きしめた。髪が胸に触り、その感触は、宮本を興奮させた。
「ここでは危険ですわ」
 加奈の言葉に、高齢な自分を気遣う言葉なのかと、宮本は今の自分の行動を、躊躇うのだった。
「旨い料理はすぐに食べたくなるので・・」
「お寿司ですか?摘まみ食い」
「摘まみ食いです。僕は心までは食べませんよ」
「恋はしないって訳?」
「本能が満足すればいいんです。食事のように」
「それは、ベットが楽しみ」
妻であれば、愛撫の感情に、悦ばせたいと思うのだろうが、今までの宮本は、自分が喜びを感じれば満足したのだ。ベットに横たわる加奈を見て、宮本は加奈を悦ばせたいと思い始めた。女性の身体を知り尽くした男である。
 加奈の身体は廣木を受け入れた時の悦びを感じ始めた。そして、かって感じたことのない陶酔感に浸り始めた。客席から鳴り響く、拍手のような満足感である。宮本は心までは奪わないと言ったが、加奈自身の心が、宮本の心を知りたいと感じ始めていた。
「奥様はお若いの?」
「今流で言えばバツイチです」
「私は結婚して子供が1人ですわ」
「今晩のこと後悔させましたか」
「いいえ、初めてではありませんから」
「あなたの美しさでは、男は黙っていないでしょう」
「そのように見えますの」
「雰囲気を感じるかな」
「近いうちに食事でも・・」
「いや、家庭が大切でしょうから」
 宮本は.深入りし過ぎたくはなかった。今までは、ほとんど金を渡して分かれていたのだ。
宮本が加奈の部屋を出たのは、日付が変わっていた。宮本は自分の部屋のベットに入るが、気持ちが昂っていた。
 今まで何人の女性と関係したのだろうか、それを自慢にした自分が、初めて惨めに思えたのだ。1人の女性を愛し続けることができなかった自分が、今になって悔やまれたのだ。はるかにそのことのほうが、男の自慢ではないかと・・・
 加奈は1人になり、カーテンを開けると、満月であった。すべての暗闇から、解放された心のような、曇りのない明りが加奈を見てくれた。
 明日からはまた、少しづつ欠けていくのだと思うと、このいまの時間が永遠に続いてほしいと願った。
 夫と子のところに明日は帰ろうと誓った。













 












作品名:欠けた月の暗闇の中 作家名:吉葉ひろし