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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
novelistID. 29622
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<見下ろす花火> 病院の坂道 2

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 僕が香織ちゃんの入院する病院へ日曜日に行くことは殆ど無い。
 日曜日には彼女の両親が行っているので僕の出る幕ではないのである。
 長期入院で退屈している香織ちゃんに図書館で借りた本を届ける為、僕は大抵水曜日に病院へ行く。
 水曜には中学の部活が無いし、図書館も夜の七時まで開いている。
 読み終わった本を返却ポストに落すのはあまり好きではないのだ。

 こうして日曜日に病院へ来たのは、今週の水曜日に図書の定期配送を行った際に花火大会の話題が出たからだ。
「去年も見えたよ。この窓から。
 でもねぇ、ピンポン玉みたいに小さいし、音も殆ど聞こえなかったよ」香織ちゃんはそれから懐かしそうに子供の頃に行った花火大会の話しをした。
 僕が小学二年生くらいまでは、香織ちゃんの両親が花火大会に僕も一緒に連れて行ってくれた。
 でも、三年生からは父さんの仕事が変って時間ができたので、僕は両親と花火大会に行くようになったのだ。
「でも、そのピンポン玉みたいな花火って、見てみたいな」ぐるぐる巡ってまた去年の花火大会の話しになったところで僕はポツリと呟いた。
「祐君って変った趣味だね。ここから眺める花火なんて線香花火より地味だよ――。
 でもまあ、後学の為に一編観てみても良いかもね。ここ面会時間は八時までだから終わりまで見れるよ……」