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東京メランコリズム【前編】

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言った。
「僕に聞こえたのは幻聴だと思いますか?」
「はっきり言うね。」
「はい…」
「幻聴だよ。」
「でも…」
「幻聴だよ。」
「…」
「忘れなよ。」
「でもはっきり聞こえるんですよ?」
「それでも幻聴なんだよ。もう春子さんのことは忘れて。」
「…」
「私じゃ、ダメ…?」
そう言ったなつは蓮斗にキスをした。
「…」
「私ね、蓮斗くんのことが好きなの。」
「僕は…」
「そういうはっきりしないところも。」
「今は春子のことで頭がいっぱいなんです。」
「わかってるよ。だから幻聴が聞こえるんだよ。」
「幻聴…」
「そう、幻聴。」
「…」
「だから忘れて、春子さんのこと。」
そう言うとまたなつは蓮斗にキスをした。今度は舌を入れてきた。深いキスだった。
「なつさん…」
蓮斗はなつの身体に触れた。
「いいよ?」
そして蓮斗は少しずつなつの身体に触れ胸を触り、少しずつ下の方へと手を伸ばしていった。それからふたりはひとつになった。なつは嬉しそうだった。春子と同じように好きな人に触れられることは幸せなのだろうか。それは春子だからなのか、なつだからなのか、女性とはそういうものなのか蓮斗にはわからなかった。

 翌朝、なつは蓮斗の隣に居た。蓮斗は隣になつが居て安心した。ひとりで居ることが寂しかったということもあるが、きっと不安だったのだ。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「もう敬語やめなよ。」
「じゃあ…おはよう。」
「よし!」