オヤジ達の白球 56話~60話
ピッチングマシンは、アーム式とローター(ホイール)式がある。
アーム式は基本的にストレートのみ。
モーターが2つあるローター式は、回転数を変えることで変化球を
投げることができる。
「なるほど。
アームの回転を投手の腕の振りに見てタイミングをとればいいのか。
あ・・・あれ、機械のやつ、おかしいなと思ったら、下からじゃなくて、
上から投げてくるぜ!
いいのかよ。上から投げてくるソフトボールの投球は!」
「しかたないですよ。なにしろこの機械は、30年も前の古いものですから。
俺も中学でソフトをはじめたころ。ここへずいぶん通いました。
その頃から投げていたんです、この機械は。上から」
「世話になったのは小山だけじゃねぇぞ。俺も中学の頃はよくここへ来た。
あそこにぶら下がっているホームランの看板へ、打球を当てると
景品がもらえる。
それが欲しくて、手に豆が出来るまで必死に打ったもんだ」
柊がバットを片手に小山の背後へやって来た。
「先輩もですか。実は俺もそうなんです。
景品が欲しくてずいぶんこのバッティング・センターへ通いました」
嬉しそうにこたえる小山へ、柊が表を見ろと指をさす。
「そんなことよりも慎吾。
どうやら、ビニールハウスの心配をする必要がありそうだ。
天気予報より早く、西から雪雲のかたまりが接近してきたようだ。
表の駐車場がもう、雪で白くなってきた」
(59)へつづく
作品名:オヤジ達の白球 56話~60話 作家名:落合順平