オヤジ達の白球 56話~60話
「おい。キュウリ屋。ビニールハウスは大丈夫か?」
「5㌢や10㌢の雪じゃビクともしません。大丈夫です。
屋根は丸い形をしています。少々の雪なら、滑りおちていきますから」
「そうか、雪が勝手に滑り落ちるのか。じゃ心配する必要はないな。
ビニールハウスってやつは、意外に丈夫に出来ているんだな。
何年か前だがハウスの屋根へ、雪がたっぷり積もったのを見たことがある。
桜が咲くころだったなぁ。たしか、3月おわりのドカ雪だ」
「ありましたねぇ。確かにそんな年が。
あのときは20㌢ほど降りました。しかし、このあたりのハウスは
ぜんぶ無事でした」
「うん。あのとき潰れた話は聞かなかった。
20センチくらいの雪ならぜんぜん大丈夫なんだな、
このあたりのビニールハウスは?」
「ええ。雪よりも、風対策を重視しています。
群馬の空っ風は、台風なみの強風になりますからねぇ」
「そいつは言える。
赤城の山から吹き下ろす真冬の空っ風は半端じゃないからな。
おっ・・・メールがやって来た」
熊のポケットでメールの着信音が鳴る。
「誰だ、今ごろ」液晶画面をのぞき込む熊の顔が苦笑にかわる。
「どうしました?」
「昨日から愛人と2人で水上温泉へ行っている先輩からだ。
ようやく口説けて、念願だった2人だけの温泉旅行が実現したらしい。
どれどれ。夕べの首尾の報告かな・・・」
作品名:オヤジ達の白球 56話~60話 作家名:落合順平