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根岸 郁男
根岸 郁男
novelistID. 64631
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徳冶朗と亜理須

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   黄色い丸みを帯びた自動車が徳治朗の車の前にバックで止まる。
   森野亜理須、両脇に袋を携えておりて来る。
   ピンポーン、とチャイムを押す森野亜理須。

○ 磐田 徳冶朗の自宅 居間 
   食卓テーブルの上に広げる六つ切りサイズの写真。徳治朗と登紀子の二人の写真。
徳治朗「いやぁいい男だね。もう一回結婚できるな」
登紀子「(森野亜理須の顔を覗き込んで)お嬢さんはご結婚されてますの」
亜理須「まだまだ独身ですよ。いい人がいたら紹介してくださいな」
登紀子、にこっと笑顔で、雄一朗の集合写真をだす。指をさして
登紀子「どうかしら、内の息子です」
    亜理須、覗き込んでいる
徳治朗「お嬢さんに失礼だろ。優一朗は三十過ぎたジジイだ。」
亜理須「わたし、相手がおじさんでもぜんぜん気にならないタイプなんですよ」
   と、写真を覗きこんでいる。
   突然、電話が鳴る。
登紀子が電話器の方へ近づく
登紀子「ゼロナナニ…どこかしら」
亜理須「大阪の池田市です!」
   登紀子、電話を取る。突然驚愕の表情となり、床に倒れこんだ。
   亜理須、土岐子を抱きかかえ、ソファに移す。
   徳冶朗、外れた受話器を拾い替わりにでる
徳冶朗「あ、すみません。磐田です」
笹西「(電話の声)こちら大阪府池田市の警察署交通課のもんです。私、笹西といいます。そちら磐田 雄一朗さんのご実家の方でしょうか。お父様でしょうか」
徳冶朗「そうです、雄一朗は私の息子です」
笹西「電話でなんですが息子さん、交通事故に遭いましてなぁ、救急車で市内の病院に搬送された時はまだ息はあったんですが発見が遅く、集中治療室で亡くなられました。早速大変申し訳ないんですが遺体の確認と引取りをお願いしたいんですが、よろしいでしょうか。……。そんなら住所いいますんでメモしてくれはりますか」
徳冶朗「はい」
   聞いていた亜理須がメモ用紙と筆記用具を差し出す。メモする徳冶朗。
   受話器を置く徳冶朗。
   徳冶朗、隣のソファで横になっている登紀子に
徳冶朗「大丈夫かお前」
   登紀子、うっすら目をあけて
登紀子「まだ眩暈がするけど、さっきよりは大丈夫」
   徳冶朗、壁にかかっている時計をみる。
   十一時前を指している時計。
徳冶朗「じゃ、いってくるか」
登紀子「どこへ?」
徳冶朗「大阪の池田市民病院遺体安置所」
   亜理須と土岐子顔を見合す。
登紀子「いくって、今から?あなた大阪まで新幹線で何時間かかると思っているの」
徳冶朗「新幹線じゃない、車だよ、マイカー」
   再び亜理須と土岐子顔を見合す
亜理須「磐田さん、私運転していきます。最近ご年配の方が運転する交通事故が多いですし。いえ、磐田さんの運転があぶないってことじゃないんですよ。池田市は実家のある場所ですし、市民病院の場所もわかります」
徳冶朗「亜理須さんは仕事があるでしょう。それに女性だし」
亜理須「これも仕事のひとつです。会社には電話しときます。それに、女性ですけど磐田さんとなら安心です。」
   亜理須、にこりとする。
亜理須「磐田さん、遺体の確認後、息子さんはどうされますか。遺体のままここまで搬送されるのか火葬だけを行ってお骨だけを持って帰宅をされるか」
徳冶朗「遺体を搬送できるのか」
亜理須「できますが葬儀社に連絡して長距離搬送されますと料金が高額になる場合もあります。火葬をされた方が、これからご葬儀をされる場合時間的にも費用的にも負担が軽減されると思います。」
徳冶朗「じゃそうしよう」
   亜理須、頷く。
亜理須「じゃ私、明日の朝六時半までにここにきますので。あ、磐田さん、雄一朗さんのお写真ありますか。私明日までにパソコンで作ってきます」
徳冶朗「申し訳ない」
   徳冶朗、女性(奈津実)と写っている写真をテーブルから掻き分けて渡す。
   手にとる亜理須、じっとみる。雄一郎の傍らのピースサインをしている女性との写真。
亜理須「この女性の方は彼女さんですか」
徳冶朗「さあ、同じ会社の人らしいが、雄一郎からは彼女がいるとは聞いていないし」
亜理須「そうですか」
   じっとみている。

○ 名神高速道路 夕方
   オレンジ色の太陽光が名神高速道路を照らしている。
   走行している黄色い軽自動車。
   運転している亜理須と助手席の徳冶朗。

○ 大阪府池田市桃園火葬場 駐車場 (翌日 午前中)
   亜理須の黄色い軽自動車が停まっている。
   その隣に伊丹葬儀社の洋型霊柩車も停まっている。

○ 火葬場 中
   火葬の入り口にある小さな台にハガキ版サイズの遺影写真がおいてある。昨日預かった写真で作成した背景のみ消した写真。
   喪服姿の亜理須、徳冶朗が合掌している。読経している住職。火葬の最中。
   その近くに伊丹葬儀社の従業員がに一人いる。

○ 待合室
   待合室のソファに座って居眠りをしている亜理須。
   傍らで徳冶朗と伊丹葬儀社の従業員が話しをしている。
   礼服姿の男性が二人近づいてくる。
   徳冶朗のソファの前で立ち止まり
山村「(会釈し)磐田 雄一朗様のお父様ですね。私、同じ会社の山村と申します。この度は突然のことで、お悔やみ申し上げます」
     一緒に来た男性(皹野)と共に再び一礼する。
     山村と皹野、名刺を渡す。
     亜理須、話声で目を覚まし、徳冶朗の脇に並ぶ。
     亜理須、皹野を見る。
皹野「(徳冶朗へ)先ほど、ここに来る前に雄一朗くんのアパートへいってきました。大家さん立合いの下で遺品整理業者さんに依頼して作業を進めている最中です。火葬が終わる頃には終了するようなので、後で立ち寄り遺品を預かりましてお帰りになる前迄にはお渡ししますので」
      山村と皹野、軽く会釈をすると出口に向かう。
亜理須「どこかで見たような気がする」
徳冶朗「今のお二人?」
亜理須「若い人の方…」
   皹野 亨と山村、二人の男性とすれ違う。
   笹西(池田市交通課課長・56)と遠山(池田市捜査課刑事・36)。
   徳冶朗と亜理須が深く会釈する。
   立ち止まると笹西と遠山、軽く会釈する。
笹西「昨日はお忙しいところ夜遅くに遺体確認のために大阪までご足労していただきありがとうございました。お二人が帰られた後、こちらの捜査課の刑事さんと事故車搭載のドライブレコーダーを確認してもらったんですがね。これが単なるひき逃げの交通事故ではなく殺人の疑いの可能性があるということで刑事さんにきていただきました」
徳冶朗「(驚愕)殺人?」
遠山「(警察手帳を出し)遠山と申します。実はドライブレコーダーに映っていた映像を見てますと、殺人の可能性も否定できない映像があるんです」
亜理須「犯人と思われる方の映像は映っているんですか」
遠山「そのことでまたお願いがあるのですが」
亜理須「はい、なんでもします」
遠山「一緒にドライブレコーダーの映像を見ていただきたいのですが、署の方まで同行願いませんか」
亜理須「はい、もちろんです。(徳冶朗に)いいですよね」
    徳冶朗、頷く。

○ 池田市警察署 正面 (夜)

○ 署内 一室
作品名:徳冶朗と亜理須 作家名:根岸 郁男