オヤジ達の白球 51話~55話
単棟のハウスもある。
しかし、このあたりでは連棟タイプの大型ハウスがやたらに目立つ。
道の両脇にびっしりと連棟のハウスが並びはじめた。
「このハウスだ。いまの時間、ここで作業しているはずだ」
ハウスの一角で柊が車をとめる。
「やけに詳しいな、おまえ」車を降りながら勇作が、柊に声をかける。
「総合土木職の前は、農業試験場で副所長をしていた。
やたらと有機栽培の普及で奔走した。
化学肥料と農薬を減らし、安心と信頼の群馬の野菜を育ってるためさ。
道路の補修に駆け回る前は、キュウリやナスの有機栽培を指導していたんだ」
「なるほど。それでビニールハウスばかりのこのあたりの地理に詳しい訳か。
俺にはどれも同じに見えて、まったく区別がつかないが・・・」
「お~い、居るかぁ。俺だぁ~」奥へ向かって柊が、大きな声で呼びかける。
ほどなくして「は~い」という声が戻って来る。
「珍しいですねぇ、大先輩」
日に焼けた顔が、キュウリの向こうからあらわれる。
葉の手入れをしていたようだ。
手にちぎったばかりの大きなキュウリの主葉を握っている。
「おう。電話で伝えた一件でやって来た。
こちらが居酒屋の店主。できたばかりのチームの監督をしている祐介だ。
うしろにいるのはスコアラーの陽子さん。2人は他人の関係だそうだ。
悪いなぁ。仕事中に邪魔して」
「どういたしまして」男の日に焼けた顔が柔和になる。
作品名:オヤジ達の白球 51話~55話 作家名:落合順平