新作落語 三『頭』旅
幇間「くわばらくわばら、それじゃあたしも失礼して本性を露わして巨大化を……」
中「おう、ダダだったか! お前ぇ、なんだったか、芸があったよな」
幇間「へい、三つの顔を使い分けられます」
中「そうだった、そうだった、だけどそいつは戦闘には何の役にも立たねぇな」
幇間「実はそうなんで……元々の戦闘能力もあんまり高くありやせんで、人を化かすことなら……」
中「なるほどな、幇間にゃ持って来いってわけだ」
幇間「そうなんで……ひとつ陽気に行きやしょう」
飲めや歌えや、そして踊れやの大宴会が始まります、するってぇと……。
客「お賑やかなことですな」
中「おう、うるさかったかい? すまねぇな」
客「いえいえ、あっしも賑やかなのは大好きでございまして……何しろあっしはギャオスでございますからな」
中「そいつは良いや、良かったら一緒に飲んで騒いでくんねぇ」
客「そりゃもう、騒がしいってことにかけちゃ人後に、いえ、怪獣後に落ちない性質でして、存分に騒がせていただきやす」
中「おうよ! 思いっきり騒ごうじゃねぇか」
ってなわけで、ギャオスまで加わった大騒ぎ、ですがギャオスの武器は超音波メス、羽目を外しますとついついそいつを発射してしまうんでございます。
超音波メスが隣の部屋のふすまを突き抜けますと、ふすまがガラリと開いて現れましたのは大魔神でございます。
隣客「楽しんでいるところ水を差してすまない、しかし今超音波メスが飛んできたのだが」
客「あ、そいつは申し訳ありやせん、ついつい調子に乗りやして……もしやお怪我を?」
隣客「いやいや、それは大丈夫なのだが、さすがに騒がしいし危なくて眠れん、もそっと静かに願いたいのだが」
中「それは申し訳ありやせん……おい、ピット星人、ダダ、それにギャオス、この辺りでおひけにしようじゃねぇか」
隣客「そうしてもらえるとありがたい、いや、お楽しみを邪魔だてしようと言うわけではないのだが、明日も早いのでな」
中「へい、あっしらもそろそろ休みますんで」
左「お騒がせしてすみませんでしたな」
右「では、おやすみなさい……」
芸者「せっかく盛り上がってたのにもうお引けですか? なんだかつまんないねぇ」
中「まあ、そう言うな」
芸者「でも、キングギドラの旦那、そりゃ大魔神も強いでしょうけど、旦那くらい強い怪獣もいないんじゃないですか? それが何だか借りてきた猫みたいに大人しくなっちまって……」
中「いや、どうもあいつは苦手なんだ」
幇間「でも憤怒の魔人にはなっていやせんでしたぜ、スサノオノミコトみたいな姿であんまり怖くもありませんでしたがな」
右「そうよ……だが、どうもあの姿と太刀を見るといけねぇや、首を切り落とされそうな気がしてな」
幇間「それはいったいどういったわけで?」
左「どうも先祖の記憶が残ってるみたいでなぁ」
幇間「ご先祖と仰いますと?」
中「八岐大蛇ってんだ」
お後がよろしいようで……。
作品名:新作落語 三『頭』旅 作家名:ST