その必要は。
「今日私は どうしても、相合傘をする必要があるの!」
歯を剥いた明夏さんに、景冬君が顔を顰めます。
「その癖も、止めろっていってるよな?」
「本日のラッキーアクションなのよ!!」
「─ は?!」
ぽかんする景冬君。
目を血走らせた明夏さんが、距離を詰めます。
「もし相合傘をしなかったせいで…私の運勢が悪くなったら、責任取れる?」
「─ 朝は やってないけど、何にも起きてないじゃないか。」
「昼休みに、スマホで知ったの!」
「迂闊に、占いなんか見るなよ…」
「悪運は蛍も殺すんだからね!?」
低く雷鳴でも発しかねないオーラを纏って、明夏さんは微笑みました。
「あんたが相合傘してくれないなら…こちらにも考えがあるから」
「ちょっと待て。」
「人通りが多い所で大泣きするから。帰り道、あんたの横でしゃがみこんで!」
<泣くテロ> 宣言が出たら、もう何を言っても無駄。
経験上 そう身に沁みている景冬君は、心中に渦巻く感情を抑え込んで呟きます。
「…帰り 俺の傘に入っていくか?」
「し、仕方ないわね。」